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9月16日、資生堂の汐留オフィスでサイエンスカフェが開かれました。サイエンスカフェとは、お茶やお菓子をいただきながら、気軽に科学について話し合ったり、聞いたりする場のこと。欧米では頻繁に行われているそうですよ。今回はなんと小学生から高校生まで10名のリケジョが参加していました。
お話をしてくださったのは、宮崎大学で海洋生態学の研究をしている安田仁奈さん。今年の「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」の受賞者です。この賞は、次世代の女性研究者を育成するために設立されました。受賞すると資生堂から1年間の金銭的な研究支援を受けることができます。
いきなりですが、真っ青な海を想像してみてください。透き通った海の中にはきれいな魚が泳いでいて、海藻がゆらゆらしているでしょう。その海藻の中でもひときわ美しい、たくさんのサンゴからできたサンゴ礁を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。今回はそのサンゴについてのお話から始まりました。サンゴというのは隙間に多様な生態系が生息していて、海の豊かさの象徴です。しかしいま、サンゴ礁が危険に晒されています。このままだと30年後には、今あるサンゴ礁のうち30%が減ってしまうと言われています。原因はさまざまですが、実は天敵オニヒトデがサンゴを食べてしまうことが大きな理由のひとつです。
「え、オニヒトデ?ヒトデにツノでも生えているの?!」と思っているそこのあなた、オニヒトデは普通のヒトデの仲間よりも5倍ぐらい大きい“オニ”なのです。いま、オニヒトデの大量発生が世界各地で起こっています。美しい海の景観を守るために、各地で駆除を試みていますが、何せオニヒトデは半分に切っても死なないほど強い再生能力を持っています。窒素を含んでいるので肥料にもならず、駆除したあとの使い道がない。しかもひとつひとつが重い。駆除はなかなか思うように進みません。
安田さんは、まさにこのオニヒトデの大量発生の原因について研究しています。オニヒトデの赤ちゃんを採取するために世界15カ国をまわり、採取した海水の中から小さなオニヒトデの赤ちゃんを顕微鏡で探す、という大変な毎日だったそうです。こうした研究の結果、黒潮があるところにオニヒトデが大量発生することが分かりました。
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さらに近代化によって生活排水が海に大量に流されてきました。すると海の中の養分が増え、オニヒトデの赤ちゃんの餌が増えました。餌が増えると生存率がぐっと上がります。そうやってオニヒトデはどんどん増えていき、各地で大量発生が起こったという仕組みが分かりました。でもよくよく考えてみると、生活排水を流しているのは人間。要は、人間が原因ということですね。
自分たちの海を守るために駆除していたオニヒトデはヒトが原因で増殖していたとは。オニヒトデの大量発生は自然界からのサインだと安田さんはおっしゃっていました。
まだまだ私たちが気づけていない自然界からのサインがあるかもしれないですね。少しでも興味がある方はこれを機に、近くのサイエンスカフェやシンポジウムなどに足を運んでみてはいかが?

今回も参加者に感想をいただきました。

横浜サイエンスフロンティア高等学校 2年
川口絢子さん
将来は医療系の仕事に就きたいです。特に再生医療などの分野に興味があるので、生物の再生能力に注目しています。授業で棘皮動物であるウミシダの紹介していたのですが、それはとても再生能力が高い生物で、現在はその研究を学校で行っています。今回のヒトデも再生能力が高い生物だと聞いて、生物の不思議なつながりを感じています。サイエンスが面白いのは、違う生命に共通点を見出すとドキドキするからです。分からないことが研究によって分かるようになる喜びをこれからの自分の研究を通して感じられたらと思っています。

東京学芸大学附属高等学校 3年
松尾沙希さん
今日はとても楽しかったです。個人的にはクラゲとサンゴが同じ仲間だと知り、衝撃を受けました。オニヒトデは人々に毛嫌いされていると言われていましたが、私には綺麗に見えました。切っても再生する能力を持っているのはすごいですね。私はオニヒトデの存在も、それが異常事態にあることも今日初めて知りました。今回のようなサイエンスカフェはもっと開かれてもいいんじゃないかと思いました。多くの人が認知することで、世の中に科学の面白さや今の問題が広まって、意識も変わるのではないかと思いました。将来はサイエンスコミュニケーターになってその手伝いをしたいです。

(瀬川明日奈)