リケジョからの質問
非医者が医療に携わる道について

悩める子羊ちゃん
質問日:
2021.08.15
私は生物の細胞や遺伝に興味があり、医療にも関わりたいと思っています。しかし、医学部医学科を受験するほどの学力も勇気もありません。そのため、理学部か理工学部の生物学科や化学専攻などを目指そうと思っていました。(生化学などを学びたいです)
理学部、理工学部の生物または化学専攻でも、医療に携わることはできますか?
また、他学部から医学部大学院に進学する道もあると最近知ったのですが、医学博士の称号を得たあとはみんな研究を続けるのでしょうか?教授になるのはやはり医者✕医学博士の人の方が良いようですが、非医者の医学博士はどのような立場で、お給料などどのくらいなんでしょうか?また、非医者の医学博士は国境なき医師団などでの海外医療支援活動をすることができますか?
理学部、理工学部の生物または化学専攻でも、医療に携わることはできますか?
また、他学部から医学部大学院に進学する道もあると最近知ったのですが、医学博士の称号を得たあとはみんな研究を続けるのでしょうか?教授になるのはやはり医者✕医学博士の人の方が良いようですが、非医者の医学博士はどのような立場で、お給料などどのくらいなんでしょうか?また、非医者の医学博士は国境なき医師団などでの海外医療支援活動をすることができますか?
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先輩リケジョからの回答2 回答
かんな(医学博士、研究所勤務)
回答日:
2021.09.09
こんにちは。
医師でなくても、医学博士になることはできます。
私自身の経歴ですが、ヒトの遺伝学や、病気のかかりやすさを勉強したくて、生物学を専攻しました。その後、医科学修士という、医師以外の人が医学研究をするための大学院に進学し、
http://www.md.tsukuba.ac.jp/FrontierSite/
国立研究所で基礎医学(遺伝医学)の研究者になりました。医学博士は、その仕事で行った研究論文を大学に提出することで取ることができました。(多くの研究者は、修士のあと、博士課程に進学します)
大学や国立研究所で医学の研究をする研究者には、非医師も沢山います。しかし、直接患者さんを見たり、貴重な検体(血液や病理組織)を頂くには、医師資格を持っている方との協力が必須です。そのため、自分のアイデアを個人で研究して行くには、医師免許はあった方が強みです。しかし、理学部出身者は、基礎生物学や、研究手法の知識に長けており、また、医師の方々は診療も忙しいため、両者の協力は不可欠でしょう。
ノーベル医学生理学賞受賞の研究でも、iPSやオートファジー、がん免疫療法など、非医師の研究者が多くいますし、むしろ医師でも診療活動はほとんどされてないでしょう。
私自身は、大学入学当初から、ヒトについての遺伝学や病気に興味があったため、虫や微生物、植物を相手にする基礎生物学の講義は退屈なこともありました。しかし、そのような基礎生命学の知識はその後の研究にとても役に立っています。医師とは違うバックグラウンド、工学や心理学などもそうですが、いろんな研究者がいて良い研究ができると言えます。
筑波大学生物学類では、人間生物学のコースがあり、3年次よりヒトや医学に特化した勉強もできます。
https://cbs.biol.tsukuba.ac.jp/course/
また、医療科学類では、臨床検査技師を養成しますが、医学研究者の養成コースもあります。
https://www.md.tsukuba.ac.jp/med-sciences/
医師免許でなくても、医学研究をする上で、臨床検査技師も持っていると有利な資格だと思います。
さて、非医師博士は教授になれるか?というご質問ですが、これは、難しいでしょう。特に、医学部や厚労省系研究所のトップは、診療活動や医学生の指導も重要だからです。しかし、研究所全体では非医師も多いです。
お給料ですが、今、全ての研究者が置かれている状況は、終身雇用はない、ということです。博士を取って研究を始めたら、数年ごとに業績を評価されポジションを勝ち得ていく、という世界で、なかなか厳しい世界です。
博士研究者でも、私はいわゆるアカデミック(大学や国立研究所)で働いていますが、製薬会社をはじめとする企業に就職すると、もう少し雇用の安定は得られるかもしれません。アカデミックと企業では研究姿勢が違います。おおざっぱに言うと、やはり企業は利益重視なので、私の場合、基礎生命現象、「なぜ?」を追求するにはアカデミックが向いていました。
「国境なき医師団」についてですが、現場で必要とされるのはズバリ即戦力のため、医師か医療従事者でないとダメな気もしますし、事務局で働いている知人は、むしろ国際関係の社会学やマネージメントを修めている人です。医学博士を持って、そのような活動に参加する例として、大学の同期に海外の医学系修士(公衆衛生: Public Health)を修めたあと、WHOにインターン、就職した人がいます。海外の大学院に進学するのもお勧めします。また、国内の医科学修士を修了したあと、海外の大学院か、博士を取ってからのポスドク(Post Docter)研究員としての留学も是非お勧めします。グローバルに就職を考えることができれば、国内の研究者の厳しい状況から脱することもでき、研究生活も充実したものとなるでしょう。ちなみに、海外への研究留学は、大学入学(卒業)が一番難しく、大学院入学、ポスドク留学の方がより行きやすくなります。
子羊ちゃんは、遺伝学に興味がある、ということですが、最近「遺伝カウンセラー」という資格が認定され、その資格を取るための大学院修士課程がここ数年で国内の大学に数十カ所新設されています。最近増加した遺伝子検査について正確に説明でき、さらに悩みについて寄り添い答えることのできる人材育成を目指しています。私も、自分の遺伝学の知識を生かして、この資格について勉強しているところです。
大変長くなりましたが、夢ある将来に向けて、どうぞ、頑張って下さいね!応援しています。
医師でなくても、医学博士になることはできます。
私自身の経歴ですが、ヒトの遺伝学や、病気のかかりやすさを勉強したくて、生物学を専攻しました。その後、医科学修士という、医師以外の人が医学研究をするための大学院に進学し、
http://www.md.tsukuba.ac.jp/FrontierSite/
国立研究所で基礎医学(遺伝医学)の研究者になりました。医学博士は、その仕事で行った研究論文を大学に提出することで取ることができました。(多くの研究者は、修士のあと、博士課程に進学します)
大学や国立研究所で医学の研究をする研究者には、非医師も沢山います。しかし、直接患者さんを見たり、貴重な検体(血液や病理組織)を頂くには、医師資格を持っている方との協力が必須です。そのため、自分のアイデアを個人で研究して行くには、医師免許はあった方が強みです。しかし、理学部出身者は、基礎生物学や、研究手法の知識に長けており、また、医師の方々は診療も忙しいため、両者の協力は不可欠でしょう。
ノーベル医学生理学賞受賞の研究でも、iPSやオートファジー、がん免疫療法など、非医師の研究者が多くいますし、むしろ医師でも診療活動はほとんどされてないでしょう。
私自身は、大学入学当初から、ヒトについての遺伝学や病気に興味があったため、虫や微生物、植物を相手にする基礎生物学の講義は退屈なこともありました。しかし、そのような基礎生命学の知識はその後の研究にとても役に立っています。医師とは違うバックグラウンド、工学や心理学などもそうですが、いろんな研究者がいて良い研究ができると言えます。
筑波大学生物学類では、人間生物学のコースがあり、3年次よりヒトや医学に特化した勉強もできます。
https://cbs.biol.tsukuba.ac.jp/course/
また、医療科学類では、臨床検査技師を養成しますが、医学研究者の養成コースもあります。
https://www.md.tsukuba.ac.jp/med-sciences/
医師免許でなくても、医学研究をする上で、臨床検査技師も持っていると有利な資格だと思います。
さて、非医師博士は教授になれるか?というご質問ですが、これは、難しいでしょう。特に、医学部や厚労省系研究所のトップは、診療活動や医学生の指導も重要だからです。しかし、研究所全体では非医師も多いです。
お給料ですが、今、全ての研究者が置かれている状況は、終身雇用はない、ということです。博士を取って研究を始めたら、数年ごとに業績を評価されポジションを勝ち得ていく、という世界で、なかなか厳しい世界です。
博士研究者でも、私はいわゆるアカデミック(大学や国立研究所)で働いていますが、製薬会社をはじめとする企業に就職すると、もう少し雇用の安定は得られるかもしれません。アカデミックと企業では研究姿勢が違います。おおざっぱに言うと、やはり企業は利益重視なので、私の場合、基礎生命現象、「なぜ?」を追求するにはアカデミックが向いていました。
「国境なき医師団」についてですが、現場で必要とされるのはズバリ即戦力のため、医師か医療従事者でないとダメな気もしますし、事務局で働いている知人は、むしろ国際関係の社会学やマネージメントを修めている人です。医学博士を持って、そのような活動に参加する例として、大学の同期に海外の医学系修士(公衆衛生: Public Health)を修めたあと、WHOにインターン、就職した人がいます。海外の大学院に進学するのもお勧めします。また、国内の医科学修士を修了したあと、海外の大学院か、博士を取ってからのポスドク(Post Docter)研究員としての留学も是非お勧めします。グローバルに就職を考えることができれば、国内の研究者の厳しい状況から脱することもでき、研究生活も充実したものとなるでしょう。ちなみに、海外への研究留学は、大学入学(卒業)が一番難しく、大学院入学、ポスドク留学の方がより行きやすくなります。
子羊ちゃんは、遺伝学に興味がある、ということですが、最近「遺伝カウンセラー」という資格が認定され、その資格を取るための大学院修士課程がここ数年で国内の大学に数十カ所新設されています。最近増加した遺伝子検査について正確に説明でき、さらに悩みについて寄り添い答えることのできる人材育成を目指しています。私も、自分の遺伝学の知識を生かして、この資格について勉強しているところです。
大変長くなりましたが、夢ある将来に向けて、どうぞ、頑張って下さいね!応援しています。
お礼日時:
2021.09.09
回答していただきありがとうございます。非医者の研究のこと非常によく分かりました。また、教えていただいた筑波大学の生物学類人間生物コースや医療科学類ですが、自分でも調べてみたところ私が学びたいこととすごく一致していて、志望校候補として考えてみることにしました。留学したい思いもあったので教えていただき参考になりました。新たなことを知れ、選択肢が広がりました。自分が本当にしたいことと向き合って進路を考えていきたいと思います。本当にありがとうございました。
かんな(医学博士、研究所勤務)
回答日:
2021.09.09
「国境なき医師団」について、リケジョの別のQ&Aでの回答を見つけましたので、ご紹介します。
「国境なき医師団」では、医師以外にも必要とされるエキスパート職がある、とわかり私も勉強になりました。
https://www.rikejo.jp/ask/3779
「国境なき医師団」では、医師以外にも必要とされるエキスパート職がある、とわかり私も勉強になりました。
https://www.rikejo.jp/ask/3779
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