Q:普段はどのようなスケジュールで仕事をしていますか?
私は地元の茨城県で霞ヶ浦のアオコ研究に携わっています。冬の時期は、アオコが発生しやすい夏季に採取していたサンプルを分析したり、論文や報告書を書く作業が中心です。でも6月~9月にはアオコの発生予想をインターネットで週に1回配信していましたので、毎週、船に乗ってサンプルを取りに行っていました。火曜日に湖に行って、水曜日と木曜日に分析と予測をして、レポートを書き上げて、次の日にはネットにアップするという作業を続けていました。
現場では体力仕事なので、大変といえば大変ですが、答えは常に現場にありますので、必ず現場に出かけてデータを取りにいきます。それに外で体を動かして仕事するのは楽しいですしね(笑)。
Q:これからどんな研究をしていきたいですか?
もともとはクジラの研究者になりたくて水産学部に入ったのですが、生き物だけでなく、生き物と人間の共存や社会とのつながりというものに興味が広がっていきました。大学院は、大学時代の先生の薦めで東北大学の土木工学の研究室に所属し、「生態系サービス」の研究をしていました。
生態系サービスを簡単に説明すると、人間が自然から得ている恵みのことです。水や食べ物だけでなく、自然には人の心を癒してくれたり、水や空気をきれいにしてくれたり、波から守ってくれたり……さまざまな機能があります。例えば、コンクリートの堤防などで自然を無理にコントロールするのではなく、この生態系サービスをうまくいかすことができれば、自然環境にも優しいし、人間もうれしいという共存の道が開けてくると思います。実際、霞ヶ浦でも自然型の護岸をいくつかつくっているんですよ。
これからも生態系サービスをいかすような生態工学の研究を続けていきたいと思っています。
Q:研究者を目指す読者のみなさんにアドバイスをお願いします。
自分が好きなこと、興味あることを素直にやっていればいいと思いますが、同時にあまりにのめりこみ過ぎないで、いろんなところにアンテナを張ってくことも大事です。というのも、研究というのは結局、好奇心の芽を拾ってくることから始まります。「これは面白い!」とか、「なんでこんなふうになるんだろう?」と思う気持ちと、知らなかったことを知ることを楽しむこと。その気持ちを大事にしてほしいですね。
それから理系の人は研究フィールドが割と変わるんですよね。私も水産学から土木に変わりましたが、実は研究の世界に入ってみると、土木で生物の知識が必要だったりとか、遺伝子を利用した研究をしたりとか、全部がつながっているんです。だから勉強したことは絶対にムダになりませんので、研究者になりたい人は、自分の興味ある世界に飛び込んでみてほしいですね。
(取材・文=川原田剛 写真=井上孝明)