*船に乗って、海で新種を探す仕事
日本周辺の外洋海域における、藻類などのプランクトンの多様性を研究しています。簡単に言うと、船に乗って外洋に出かけていって、新種を探すというのが仕事ですね。
新種を見つけたら、名前をつけて、論文にまとめることになります。
今年度は、北大西洋まで3週間船に乗って、どの海域にどんな藻類が生息しているのかを調べてきました。実は昨年の9月まで産休をとっていて、仕事に復帰したばかり。
船に乗って調査していたのは、子どもが3ヵ月のとき。乗船中はずっと旦那さんが子どもの世話をしてくれました。旦那さんも研究者をしており、学生時代からの付き合いですが、研究を続けるためにはパートナーの協力・理解は不可欠ですね。
*海の中では意外にたくさんの新種が見つかります
陸にいるほ乳類のような大型動物はかなり調べられていて新種というのは滅多に出てきませんが、海の中では新種というのは意外にたくさん見つかります。時には新しい門レベルの発見もあります。船を使った調査はとてもお金がかかりますので、これまで「外洋にどのような藻類が生息しているのか?」という調査はあまり進んでいなかったのです。
このような調査は新しい生き物の発見というだけでなく、新しいバイオ資源の探索という観点でも、大きな可能性を秘めています。まさにフロンティアです。
*研究を通して生物多様性の理解を深め、将来は藻類の大図鑑もつくりたいです!
私は子どものころから藻類の研究をしたいと思っていました。私の実家は千葉県にあり、目の前が海でした。だから小さいころから海で遊びながら、自然に海を観察していたんです。すると時々、海が茶色になったりすることがあって、それを調べたら藻類の大量発生による赤潮だということがわかりました。それが藻類に興味をもったきっかけですね。
高校で入った生物部では、学校の近くに生息している「ヒカリモ」と呼ばれる藻類を材料に研究をしていました。数少ない部員のみんなと2年間がんばって研究した成果を日本で最も伝統のある科学自由研究コンテスト「日本学生科学賞」に提出した結果、文部大臣賞(当時)を受賞し、日本代表として高校生を対象とした世界最大の科学コンテスト、国際学生科学技術フェア(ISEF)にも出場しました。初めての海外での発表にどきどきしながらも、何とか入賞することができました。そのころには、もう藻類の研究者になろうと決めていましたね。
研究するなら日本を代表する藻類の専門家の先生のところで勉強したいと思って、自己推薦入試で筑波大学を受けました。他の大学に行くつもりはまったくありませんでした。ダメだったら浪人するつもりでしたが、何とか入ることができました。大学では普通、研究室には4年生から所属しますが、私は1年生のときから藻類の研究室に出入りし、大学院で博士号を取得するまで、藻類の研究を行いました。それが今の仕事につながっています。
研究を通して多くの人に生物多様性の重要性を知っていただけるようしたいですし、藻類の大図鑑をつくりたいという夢もあります。そのためにも新しい藻類を発見して、図鑑に載せるデータをいっぱい収集したいと思います!
(文=川原田剛 写真=井上孝明)