料理や食材に別の食材を足して「味変」を楽しむのが静かなブーム。
今回は、意外な組み合わせで楽しめる「味変」レシピを、おいしさの裏側にある科学的な根拠とあわせてご紹介します。
教えていただくのは、管理栄養士の棚橋伸子先生です。
管理栄養士/フードスタイリスト 棚橋 伸子先生
国際薬膳師、中医薬膳専門栄養士、日本野菜ソムリエ協会 野菜ソムリエ、日本ニュートリション協会公認 ビジネスサプリメントアドバイザー 。 管理栄養士養成施設非常勤講師。 栄養バランスを考慮したヘルシー料理を得意とし、企業の商品開発業務等にも携わる。中医学理論に基づいた薬膳料理の提案も得意とする。 facebookページ:管理栄養士棚橋伸子のすまいるきっちん https://www.facebook.com/smilekitchen
今回のテーマは、夏の定番、ひんやりして甘い「アイスクリーム」。
アイスクリームにちょい足しで味変を楽しめる組み合わせとして棚橋先生にピックアップいただいたのは、こちらの4つです。
・アイスクリーム×ごま油
・アイスクリーム×鰹節
・アイスクリーム×干し椎茸
・アイスクリーム×醤油
それぞれの組み合わせについて詳しく見ていく前に、まずはアイスクリームの基本的な知識について先生に伺います!
アイスクリームについて
先生、まずはアイスクリームについて教えてください! そもそもアイスクリームは何からできているのでしょうか?
アイスクリームの原材料は、牛乳・乳製品、砂糖やブドウ糖、果糖等の糖分、植物油脂、風味を添加するための様々な原料です。その他に、乳化剤、安定剤、着色料や香料が使用されている場合があります。
一般的にアイスクリームと呼ばれているものの中でも、含まれる乳成分の量によって「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」の4種類に分類されています。
【種類】 | 【乳成分】 |
アイスクリーム | 乳固形分15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上 |
アイスミルク | 乳固形分10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上 |
ラクトアイス | 乳固形分3.0%以上 |
氷菓 | 上記以外のもの |
アイスクリームって、凍っているのにしっとりした食感を感じますが、それはどうしてなのですか?
アイスクリームには空気が混ざっているのですが、空気の泡やアイスクリーム内に分散した脂肪の粒子が冷たさを伝えにくくし、それらがなめらかでソフトな食感を生み出しています。
実際に顕微鏡でのぞいてみると、アイスクリームは、氷、脂肪、気泡が細かく分散した状態になっています。
この空気の混合割合をオーバーランといい、一般的なアイスクリームのオーバーランは60~100%で、オーバーランが高いとフワッと軽い食感になります。
なるほど、よく分かりました! それではおすすめのちょい足しレシピの紹介に参りましょう!
アイスクリーム×ごま油
最初はごま油を挙げていただきました。これは私も聞いたことがあります!
ごま油をちょい足しすると、アーモンドなどのナッツ類を思わせるような香ばしさを感じられます。乳脂肪分が少ないタイプのアイスでも濃厚さがプラスされ、高級なアイスのような味わいに変化しますね。
この美味しさの秘密は何なのでしょうか?
一般的なごま油は白胡麻が原材料で、炒ってから搾油します。焙煎により、独特の香ばしい香りが加わりますが、この風味がちょい足しした際の美味しいと感じるポイントになっていると考えられます。
また、油分が多いことがコクをプラスすることにもつながっているのではないかと思います。
一つ気をつけていただきたいのは、カロリーですね。ごま油大さじ1杯(12g)で111kcal。アイスクリームのカロリーに、ごま油のカロリーがプラスされますので、かけすぎには注意です。
アイスクリーム×鰹節
続いてピックアップいただいたのは鰹節。アイスクリームにかける発想はなかったのですが、合うのでしょうか?
それが意外と合うのです。コクが増して、美味しくなります。鰹節には、イノシン酸という旨み成分が含まれているので、アイスに含まれるグルタミン酸との組み合わせで、旨味の相乗効果が起きている可能性あります。
旨味の相乗効果・・・・・・!
※旨味の相乗効果とは?
旨味成分は、単独で使用するよりも、アミノ酸であるグルタミン酸、核酸系の旨み物質であるイノシン酸やグアニル酸を組み合わせることで、旨味が格段に強まります。これを「旨みの相乗効果」といい、広く知られている旨みの相乗効果の例として、昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)を用いた混合出し汁があります。
さらに鰹節には400成分以上の香気成分が含まれており、鰹節の香りは美味しさに大きく寄与しているという研究データもあります。
美味しさは五感で感じるものなので、日本人にとって慣れ親しんだ味と香りが、アイスクリームへのちょい足しにも良い影響を与えているのかもしれません。
ちょい足しの方法のポイントはありますか?
よく混ぜ合わせるのがおすすめです。上からかけるだけと、口の中で鰹節の食感が独走してしまうので、全体的に混ぜ合わせた後、鰹節がアイスとなじんでしっとりした状態になってから食べると良いでしょう。
アイスクリーム×干し椎茸
干し椎茸! これも「旨味の相乗効果」でしょうか?
御名答です。干ししいたけには、「グアニル酸」という旨み成分が豊富に含まれています。先の鰹節と同じ理由で、アイスに含まれるグルタミン酸と椎茸のグアニル酸で旨味の相乗効果が起きている可能性があります。
干し椎茸をちょい足しする場合は、粉末状のものがおすすめです。またしっかり混ぜないと椎茸特有の香りがダイレクトに感じられるので、アイスクリームとの相性面では鰹節に軍配が上がるかもしれません。
アイスクリーム×醤油
4つ目は、醤油を挙げていただきました。
醤油のちょい足しも、単にかけるよりも、しっかり混ぜ合わせることがおすすめです。混ぜ合わせて食べることで味が調和し、醤油の塩味とアイスクリームの甘味の一体感を感じられます。
おいしさの秘密は何でしょうか?
醤油の主たる旨味成分はグルタミン酸ですが、その他にも甘味(原材料の小麦のでんぷんが醸造中にブドウ糖等に変化)、塩味、苦味(苦み成分のイソロイシン等のアミノ酸)、酸味(乳酸、酢酸、コハク酸等の有機酸)と基本の五味が共存、更に独特な香りを持っています。これらがアイスクリームと合わさることで、旨味の相乗効果やコクを生んでいると思います。
また鰹節と同様、慣れ親しんだ味と香りという点も見逃せません。
まとめ
今回ご紹介したように、アイスクリームと相性の良い食材は数多くあります。今回ご紹介した食材の他にも、香り、コクがプラスされる練りゴマ・ピーナッツバターや甘みを引き締める酸味が加わるバルサミコ酢などもオススメです。自分ならではのちょい足しを見つけてみる楽しさもありますね。
いろいろなちょい足しレシピを知って、夏の楽しみが増えました! 自分でも試してみたくなりました!
棚橋先生、ありがとうございました!
(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら)
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