私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための“実験手順書”でもあるのです。

今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「手作りマヨネーズのサラダ」。なめらかでコクのある仕上がりのマヨネーズを作るには、調理工程に隠された科学現象を理解することが大切です。

どこまでついてこられるかで、あなたの理系度も診断できるかも!?

まろやかでコクのあるマヨネーズを使ったサラダの再現方法とその考察

目的

野菜をおいしくいただけるまろやかなマヨネーズとそれを使ったサラダを作る。

方法

〈材料〉

■マヨネーズ(200ml分)
・卵黄(常温に戻しておく) 1個
・酢 15ml
・サラダ油 150ml
・マスタード 5g
・塩 2g
・こしょう 少量

■サラダ(2人分)
・レタス(一口大にちぎったもの) 50g
・水菜(3〜4cmに切ったもの) 50g
・ロースハム(細切りにしたもの)  2枚(約30g)
・作成したマヨネーズ 大さじ2
・オリーブ油 小さじ1
・レモン汁 小さじ1
・塩 少々※
・こしょう 少々※

※味付けは好みで調節してよい

〈調理法〉

■マヨネーズ

1. ボウルに卵黄、マスタード、塩、こしょうを入れてよく混合する。
2. 酢の半量(7〜8ml)を加えて撹拌する。
3. 少量の油をゆっくりと1滴ずつ加えて手早く充分に撹拌する。
4. クリーム状になったことを確認したら、また少量の油を加えてよく撹拌する。この手順を繰り返す。途中、粘度が高くなり攪拌しにくくなったら、残りの酢を少量加え、再度油を加えてよく攪拌する。
5. 油を全て入れたら、残りの酢を加えて撹拌する。
6. 好みの硬さにできあがったらビンなどに移して保存する。

■サラダ

1. ボウルに材料をすべて入れる。
2. 均等に味が付くよう、よく混ぜ合わせる。
3. 器に盛り付ける。

結果

なめらかでコクがあるマヨネーズと、おいしそうなサラダが完成した。

考察

マヨネーズは、卵の乳化性を活用して作られる食品である。

通常、酢(水溶性)と油(脂溶性)は撹拌しても混ざらず分離するが、マヨネーズの場合、材料のひとつである卵黄に含まれるレシチンの作用によって、酢と油が分離せず乳化しクリーム状になる。レシチンは外側に親水基、内側に親油基を持つ天然の界面活性剤であるため、油の粒子を細かくし、さらにその粒子を覆って酢になじませる役割を果たす。

レシチンは16〜18℃で乳化作用が存分に発揮される。反対に10度以下になると作用が弱まるため、あらかじめ卵黄を常温に戻しておくことが必要である。冷えたままの卵黄を使った場合、油が混ざらず分離してしまう恐れがある。また、新鮮な卵にはレシチンが多く含まれるため、できるだけ新鮮なものを使うとより乳化が安定する。

乳化には、水溶性物質の中に脂溶性物質が混ざった「O/W型エマルション」(例:牛乳やアイスクリーム)と、脂溶性物質の中に水溶性物質が混ざった「W/O型エマルション」(例:バターやマーガリン)があり、マヨネーズは「O/W型エマルション」にあてはまる

よって、先に溶いておいた卵黄と酢を混合してから油を少量ずつ加えることで、O/W型乳化が起こってクリーム状になる。このとき材料を加える順番を変えると乳化が進まずドレッシングのように分離してしまうため、卵黄→酢→油の順を守ることが重要である。

また、実験の結果、サラダ油を加える際に最初から多くの量を入れると失敗することがわかった。最初に加える油の量が少ないほど、安定したマヨネーズに仕上がった。油は1滴ずつゆっくりと加えることが重要である。

撹拌する際は電動ミキサーなどを使用してしっかりと混ぜれば混ぜるほどなめらかで軽く仕上がり、保存性も高まる。

これは、撹拌することで油の粒子がより細かくなり乳化の安定性が高まるためである。反対に撹拌が不十分だった場合食感が重たくなるほか、完成後短い期間で再び油と酢が分離してしまうことがわかった。

結論として、なめらかでコクがあるマヨネーズを再現するには

1. レシチンの乳化作用を高めるために卵黄を16〜18℃前後にしておくこと
2. O/W乳化させるために材料を加える順番と量を守ること。
3. 手早く充分に撹拌し乳化を安定させること

が重要である。


理系・文系を問わずレシピに潜む科学現象を理解することで、料理の腕もさらに上達するかもしれません。あらゆる料理で活躍するマヨネーズも、卵の特性を活かしたさまざまな科学現象のもと生まれているのでした。

では、第4回もお楽しみに!(毎月22日更新予定)

(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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