初心者でも参加できる数学イベントがたくさん

年が明け、2019年が始まりました。新しい元号の始まる年、思い切って何か新しいことを始めてみませんか。

そう、たとえば――「数学イベント」なんて、いかがでしょう。

数学ではなく、数学イベント。実は世の中には、数学のイベントが多数存在するのです。そこには数学に魅せられた者たちが集まり、ロマンを熱く語ったり、ゲームに興じたり、難しい理論を肴にお酒を飲んだりしています。

「そんなことして楽しいの?」と思うかもしれません。しかし楽しいのです。それはもちろん、筆者が数学好きであることが最大の理由です。ところが、数学にほとんど興味のなかった方でも、イベントに参加して以来、興味を持って勉強を始めたという方もいます。

こんな経験はありませんか? 友人に連れられて入ったカフェのコーヒーがあまりに美味しくて、自宅で淹れるようになった、とか。たまたま読んだ歴史小説の登場人物があまりにカッコよくて、その人に関する本を読み漁るようになった、とか。

数学でも、同じことが起こります。ちょっと勇気を出して行った数学イベント。そこで知った定理に感動して、その定理の周辺分野を勉強するようになる、なんてことがあるのです。

この記事では、2019年に参加すべき数学イベントを3つご紹介します。いずれも数学初心者にオススメのイベントですので、どうぞ気軽に参加してみて下さい。

大型イベント『ロマンティック数学ナイト』

最初に紹介するのは、『ロマンティック数学ナイト』です。

数学×ロマンティック! その名の通り、数学のロマンを語る夜のイベント。このイベントでは、数学にロマンを感じている方々(「ロマンティスト」たち)の熱いプレゼンを聞くことができます。動員数は毎回200名ほど。六本木や渋谷などの会場で、カクテルとともに数学を味わうことができます。

2018年のロマンティック数学ナイト開幕直前の会場の様子

プレゼンは一人5〜10分程度。十数人の愛に溢れるショートプレゼンが、次々に繰り出されます。

プレゼンといっても、講義ではありません。自分が魅せられた定理や興味のある分野の、いったいどこがそんなにロマンティックなのかを、熱く語るのです。

たとえば、「面積」のような数学的対象でも、時代によってその見方は変化しています。そのことを示すために、有名な円積問題「与えられた円と面積が等しい正方形を、定規とコンパスのみで作図せよ」の歴史を解説するプレゼンがありました。他にも、「ゼータ関数の3Dモデルの中に入ってみる」や、「数学用語や概念を詠んだ和歌の紹介」などもありました。

発表内容は千差万別。小学生でもわかるような小話から、大学で扱われるような専門的なテーマまで出てきます。当然、すべてのプレゼンを理解することは不可能です。それでも、ロマンティストたちの「熱」は伝わるはず。

数学の面白さが分からない、という方は、まずロマンティック数学ナイトで、その熱を感じてみてはいかがでしょうか。

(プレゼンでは、200名ほどのお客さんが数学のロマンに耳を傾けています)

開催は年3~4回の不定期。場所は主に六本木や渋谷です。参加には事前申込と参加費が必要です。公式Webサイトまたは公式Twitterで、開催時期と申込方法をご確認ください。

ロマンティック数学ナイト 公式Webサイト 公式Twitter

行ってみたいけれど、わざわざ東京都心まで出るのは……という地方在住の方もご安心を。ロマンティック数学ナイトは本家のほかに、有志による『ロマンティック数学ナイトプライム』も開催されています。これまでに長野県松本市や茨城県つくば市、愛知県名古屋市などでも開催されました。

次回は2019年1月13日(日)、東京都三鷹市で開催予定。ぜひチェックしてみてください。

まるで部活のような『数学デー』

ロマンティック数学ナイトで数学の面白さに目覚めた方は、その感動を誰かと共有したくなることでしょう。そんなときにオススメしたいのが『数学デー』です。数学デーは、部室に集まる学生のようなノリで楽しむイベントです。

東京都内で週2回、水曜日は神田、金曜日は本郷三丁目にて、どちらも17時~22時で開催されています。

水曜日の『数学デー』の様子。部室っぽい雰囲気の中で数学の問題を解いています

水曜と金曜では、雰囲気が異なります。より部室っぽいのは水曜日。十数畳ほどの部屋で大テーブルを囲み、みんなで問題を出し合ったり、数学ゲームで遊んだりします。扱われるネタは、「整数」や「図形」など幅広く、ときには素数を使ったトランプゲーム「素数大富豪」や、合同を使ったゲーム「ゴドマチ」を遊ぶ日も。

金曜日はカフェのような部屋で、20~30名程度のお客さんが集まります。自然といくつかのグループができ、それぞれで異なる話題で盛り上がります。最近流行の「圏論」(数学的な構造と、その構造同士の間の関係について研究する分野)を勉強するグループや、ゲームに興じるグループも。本棚には数学書も常備されているので、比較的自由に数学ができる空間なのです。

金曜日はより広いスペースで。写真右では圏論の勉強会、中央では数学ゲーム、左ではホモロジーの議論をしています

参加には入場料が必要(事前申し込み不要)。一般1000円、学生500円、高校生以下無料です。開催時間中に、会場へフラッと行けば入れる、まさに部活のようなノリ。

数学デーは主に東京都内で行われていますが、現在少しずつ全国へ拡大しており、札幌と大阪でも不定期に開催されています。札幌は月に1回程度、大阪は2019年1月12日に初回が開かれる予定です。詳しい場所などは公式Twitterを参照してみてください。

登壇したくなったら「日曜数学会」へ

数学の魅力に取り憑かれ、気づいたら数学の本や数字ネタを追い求めるようになってしまった……、そんなあなたはもう立派な数学マニア。「自分が理解した数学の知識を誰かに教えたい!」という気持ちになることでしょう。そんな人にオススメしたいのが『日曜数学会』です。

日曜数学会は5分間で数学の発表を行うイベント。自分がいま一番興味のあるテーマを、5分という短い時間にまとめて発表します。

気軽に発表できるためか、ややニッチなネタが多いのが特徴。たとえば、ガリレオ・ガリレイの「月の山の高さを測る方法」を解説したり、「7が合同数(三辺の長さが有理数である直角三角形の面積となりうる整数)であることを証明」したりしました。

難解なテーマを5分間にまとめるのは、簡単なようで難しい。そもそも人に教えるということ自体、とても難しい。1を話すためには、5や10まで理解しておく必要があるためです。しかしそのための発表準備をしているだけで、自分の理解が飛躍的に進みます。単に一人で勉強しているよりも、はるかに効率的なのです。

「日曜数学会」での発表の様子。スカートの型紙を数学的に解説しています

日曜数学会は単なる発表会ではなく、二次会のようなノリで楽しむイベントでもあります。実はこのイベントはなんと6時間にも及びます。5分発表は前半の3時間で行われ、後半の3時間は懇親会として、お酒やお菓子を楽しみながら、同好の士と数学談義で盛り上がります。

聴講のみの参加も可能です。発表の中に気になるものがあったら、登壇者に直接質問したり議論したりすることもできます。

日曜数学会は年3回、1月、6月、10月に開かれています。次回は2019年1月5日(土曜)、東京都内で開催予定。参加費2000円と事前申込が必要ですのでご注意ください。またニコニコ動画にて生配信も行っています。視聴は無料なのでぜひ。

日曜数学会も全国へ拡大しつつあり、札幌と大阪で不定期に開催されています。札幌はおよそ年1回、大阪はおよそ年3回の開催です。詳細は日曜数学会の公式Twitterからご確認ください。

数学の知識なんてほとんどないのに、いきなりイベントはハードルが高い!という方は、以下の数学本で予習してみてはいかがでしょう。理解が深まり、よりイベントが楽しくなりますよ。2019年はぜひ、数学イベントと数学に明け暮れる日々を過ごしてみましょう!

オススメ図書①『はじめての解析学』


数学の三本柱と呼ばれる「幾何」「代数」「解析」のうち、解析学の歴史を俯瞰する一冊

オススメ図書②『今日から使える物理数学 普及版』


物理学で使われる代表的な数学である微分方程式、ベクトル解析、複素関数、フーリエ解析について、そのポイントを解説した入門書です