「芸術工学部」で学んだ芸術と情報の融合が職業に
大日本印刷(DNP)は紙への印刷だけでなく、さまざまなビジネスを行っています。私は新規事業を開発する部署に所属し、ミクストリアリティ(MR=複合現実)を活用した体感型デジタルショールームの開発に携わっています。ヘッドマウントディスプレイやスマートフォンでお店の中にある商品を見ると、その周りの空間にさまざまな情報や色違いの商品などが浮かび、ほしいと思った瞬間に購入できるような仕組みになっています。今はプロトタイプの段階ですが、技術的にはほぼ実用化できるところまで来ていますので、生活者の方に新しいショッピング体験を提供できるように、しっかりと仕上げていきたいです。
大学では芸術工学部に進み、三本柱である数学、情報、芸術の授業を通して、モノのつくり方、仕組みを多角的に考えることを学びました。芸術の授業の中で美術作品に触れる機会が多く、海外の美術館を一人で回ったりしていました。また情報系のシステム開発の勉強もしましたので、就職を考えたとき、「大学で学んだ芸術と情報系のスキルが活かせ、自分自身が興味を持てる仕事をしたい」と思いました。それでいろいろ調べてみると、印刷会社なら美術館とつながりがあり、自分が思っているような仕事ができそうだと考え、入社を希望しました。
幸運にも入社してすぐにルーヴル美術館とDNPの共同プロジェクト『ルーヴル–DNP ミュージアムラボ』に携わることができました。これは最先端のデジタル技術などを活用しながら、これまで以上に美術鑑賞を楽しんでいただくためのプロジェクトでしたが、すごく楽しかったですね。その後、二度の産休を経て、現在の部署に異動しましたが、最新のデジタル技術を使って人をワクワクさせたり、新しい体験を提供したりする仕事にずっと取り組んできました。
一度受験に失敗したことで「世の中」を見つめ直した
父は医師。母は専業主婦でしたが薬剤師の家系で、数学科を卒業。妹も理系で医師をしています。そういう環境で育ったので、私も自然と理系に進みました。大学進学のときも「そういう家系だから」と深く考えず、最初は医歯薬系の学部を目指しましたが、1年間、長く受験勉強することに(笑)。その浪人時代に予備校に通いながら、大学にはどんな学部があり、世の中にはさまざまな職業があるのを知りました。そして芸術工学に興味を持ち、現在の仕事につながっていきますので、受験に失敗したことは、結果的によかったのかもしれませんね(笑)。
いつか新たなギフトサービスを立ち上げたいと思っています。あげたい人があげたいものをあげられて、受け取る側もほしいものをちゃんともらえて、しかも煩わしくなく、生活者にとって便利なサービスができないかな……と考えていますが、「これだっ!」というアイデアがまだ見つかっていません。でも毎日考えていたら、ふとしたときにいいアイデアが浮かんでくると信じ、日々、ヒントを探しています。
【リケジョブ・オフショット】
毎日、コーヒーを飲むときが至福の時間です。1歳と4歳の子どもがいるのですが、妊娠中と授乳中にはコーヒーを飲めませんでした。今、あらためてコーヒーを飲むと、「こんなに美味しいんだ!」と感じます。でも一番幸せなのは、やっぱり子どもと過ごす時間ですね。
(『Rikejo』2018年1月号より。一部情報は取材時のものです)