興味のあることだけでなく「人の役に立つこと」がしたくて
11年ぶりに復活したエンタテインメントロボット『aibo』の商品企画を担当しました。商品のビジョンやコンセプトを考え、開発部につなげるための仕様を考えました。『aibo』は個性を持った自律型ロボットです。人工知能(AI)を搭載しているので学習させて育てることができ、オーナーの性格や扱い方によって『aibo』の性格も変わっていきます。例えば、家の中で誰がほめてくれるか覚えて、ほめてほしいときはその人に近づいていきます。距離だけではなく心もオーナーに近づくことで、育てる楽しさを知ってほしいです。
『aibo』は自分の欲求を持ち、その欲求に従って行動するので、必ずしもこちらの言う通りに動いてくれないこともあります。私も子育てをしていて思うのですが、自分の思い通りにいかないからこそ感じられる面白さもあります。丸みを帯びたフォルムやくるくる変わる目の表情など愛らしさにもこだわり、新規に駆動部品を開発したので躍動感のある動きも特徴です。
高校時代、どの教科も成績は同じぐらいでしたが、物理への興味が圧倒的に強かったので大学では物理を専攻しました。流体力学を研究し、衝撃波や火砕流のコンピューター解析をしていました。始めは興味があることを追究できればいいと思っていましたが、自分のしていることが世の中の人に役立ってほしいと思うようになり、ドクターの道をあきらめました。いろいろな業界を見たかったので、まずは外資系のコンサルタント会社に就職。その後、自分たちのブランドのもとでモノをつくることに魅力を感じて、メーカーへの転職を決めました。
思い切ったキャリアチェンジで「新しい道」へ
ソニーへの入社後は、長くエンジニアとしてパソコンの熱を効率的に排出するための熱設計プログラムを担当。対象が地球かパソコンかの違いはありますが、大学院での流体力学と同じ方程式を使っていました。エンジニアとして働く中で、「こんな製品をこんな人に届けたい」という思いを持つようになり、商品の上流に関われる商品企画にキャリアチェンジすることにしました。社内の公募留学でビジネスコースを選択し、MBA(経営学修士)を取得するため1年半、イギリスのケンブリッジ大学に留学。帰国後、商品企画に異動し、この新プロジェクトメンバーに志願しました。また帰国後には結婚と出産もし、現在は子育て中です。毎日大変ですが男女の差がなく働ける会社なので恵まれています。
今、AIに対する期待値が世の中にありますが、現段階では人間とまったく同じように動くことはできません。だからこそAIを使って面白い存在がつくり出せるのではと思っていました。その思いが『aibo』につながりました。ソニーなら「人のライフスタイルを変えたい」という願いがかなえられそうだと入社したのですが、『aibo』を世に出したことで、その思いが実現しそうです。
【リケジョブ・オフショット】
これまで約120ヵ国に行きました。冒険好きなので人が行かない僻地を一人旅することもあります。片道4日かけてアフリカの奥地に行ったこともありました。この写真はエチオピアと南スーダンの国境に住む部族に会いに行ったときのものです。
(『Rikejo』2018年1月号より。一部情報は取材時のものです)