Q:現在のお仕事について詳しく教えて下さい。
新規事業を開発する部署に所属し、ミクストリアリティ(MR=複合現実)を活用した体感型デジタルショウルームの開発に携わっています。私の仕事は「生活者にとって価値ある体験とはどんなものがあるのだろう?」と考えて、サービスを企画して、形にしていくことです。社内の空間設計部門、システム部門などのメンバーと連携して、サービス企画から実施までのすべてに関わっています。
このシステムを導入することで、ただ商品を販売しているだけの施設が、デジタルコンテンツを体験できるまったく新しい場になる、というコンセプトで開発しました。今はプロトタイプの段階ですが、技術的にはほぼ実用化できるところまで来ています。
今後はコラボレーションしていく企業とともに、生活者の方に新しいショッピング体験を提供できるように、しっかりと仕上げていきたいです。
Q:今のお仕事のやりがいはどんなところですか?
新規ビジネスというのは、世の中の課題や生活者の課題を解決して、なおかつ他社が真似できないものを提供していかないと事業として続いていきません。きちんと将来を見据えて、「芽が出そうだな」というところまで事業を育てていくのは本当に難しいです。でも自分たちにしかできないことが、ビジネスとして「いけそうだな」というところまで育っていくと、やっているほうのモチベーションも上がります。
それに何より、自分たちで考えたアイデアを形にして、たくさんの人に見てもらうことは楽しいですし、「すごく価値あるね。いいね!」と言ってもらえると、やってよかったと心から思います。
Q:大学ではどういう勉強をしましたか?
私は芸術工学部芸術情報設計学科に進みましたので、芸術も工学も勉強をしました。工学系の授業ではプログラミングなど、情報系のシステム開発の勉強をしました。芸術系の授業ではデッサンや、プロダクトデザインについても勉強し、モノのつくり方・仕組みを多角的に考えることを、芸術工学という分野で学びました。
情報系の研究室に進み、大学院ではWEBカメラを使った視覚障がい者支援システムの開発に取り組みました。遠隔地からサポーターが視覚障がい者の目の代わりをして支援を行うシステムです。実際に視覚障がい者の方に協力いただいて使い勝手が良い仕組みを検証したり、学会で発表していろいろな方に意見を聞いたりしながらつくり上げました。
同級生はさまざまな分野の企業に就職しています。システムエンジニア(SE)やマスコミ系、私と同じように印刷会社に入った人もいました。また博物館や美術館の展示などを手がける施工会社に就職し、モノづくりに携わっている人もいます。
Q:高校時代はどんなことに夢中になっていましたか?
私の通っていた高校は体育祭や文化祭などの学校行事にすごく力を入れていました。私も文化祭の時はクラスの実行委員をやったりして、学校行事に夢中になっていました。
受験勉強を始めたのは高校3年の夏休みが終わってからです。かなり遅いタイミングですが、ちょうど夏に体育祭があって、高3になっても夏休みは体育祭の準備に一生懸命になっている、という学校だったんです。それでもきちんと志望校に受かる人はいるのですが、私はダメでしたね(笑)。
結局、普通の人より1年間長く受験勉強をすることになりましたが、浪人時代に初めて、勉強や将来のことだけを考える時間ができて、大学にはどういう学部があるのか調べたり、世の中にはいろんな仕事があることを知ったりしました。それまでは進路のことをあまり深く考える機会がなく、いろんな学部や職業があることに目を向けていなかったんです。いま振り返ると、予備校で勉強した1年間は、私にとって大きな意味がありましたね。
(取材・文=川原田剛/写真=杉山和行)