ちょっとショックな報告が……!
こんにちは! お茶大リケジョ部のかすみです。
つい先月までは、暦の上で秋に入ったのにいつまでたっても夏服から秋服へ衣替えするタイミングが訪れず、地球温暖化の影響かしら……なんて考えていましたが、最近は急激に気温が下がるなど、突然の冬の訪れに地球は氷河期に向かっているという噂(?)のことを思い出しています。
実際どうなっているのだろうと少し疑問に思っていた11月26日、国連環境計画(UNEP)は地球温暖化に関する年次報告書で、昨年(2018年)の世界の温室効果ガス排出量は過去最高になり、何も対策を講じなければ、世界の気温は、温暖化対策の国際枠組みである”パリ協定”で定めた「産業革命前からの気温上昇を1.5℃に制限する」という目標の倍以上上昇する可能性がある、と報告しました。
具体的には、もう既に平均気温は1.1℃上昇していて、このままだと今世紀中に3.2℃上昇するとしています。
今対策を始めたとすると、目標を達成するには、世界の温室効果ガス排出量を毎年7.6%ずつ削減する必要があります。
温室効果ガス排出量に対する議論が始まってから随分と時間が経っているにもかかわらず、年々その排出量が増えているということを考えると、毎年7.6%削減するというのはなかなか難しい問題ということがわかります。
ゼロエミッション東京のように、国や自治体によって様々な対策がなされても、私たち一人一人が行動しないと達成は難しそうな数字ですよね。
でも、具体的にどういうところから見直せばいいのかわからない!と思うので、日本のエネルギーの動向やその内訳を見ることで問題を明らかにしていきたいと思います!
エネルギー消費の動向
ではまずは、エネルギー消費の動向から見ていきましょう!
下のグラフをご覧ください!
このグラフは、エネルギー消費量の合計を表したものです。
2000年までは増加傾向にあったエネルギー消費も、最近では減少傾向にあることがわかります。
目標を達成できるような減少の仕方かどうかはさておき、2010年以降ほぼ毎年減少にあるというのはなかなかいい感じのようですね。
では、部門ごとに見てみるとどうなのでしょうか。
次は、部門ごとのエネルギー消費の推移を見ていきたいと思います。
まずは、産業・業務他部門のグラフから見ていきます。
こちらが製造業のもの、
こちらが業務他部門のものになります。
製造業の方のエネルギー消費指数は横ばいですが、業務他部門のエネルギー消費は先ほど同様、最近は減少傾向にあることがわかります。
次に、家庭部門のグラフを見てみましょう。
2000年頃までは増加傾向にあったことは今までと同じですが、2000年代に入りグラフが横ばいになり、その後若干減少しています。
そして最後は運輸部門です。
綺麗な山形を描いており、2000年代に入ってからは減少傾向にあることがわかります。
世帯数が増加しているという現実……
ここまで部門ごとのエネルギー消費量を見てきましたが、これからは私たちに最も関係のある家庭部門を中心に見ていきたいと思います。
様々な省エネ家電が出てきているのに、家庭部門のエネルギー消費量の推移がなぜ横ばいだったり若干しか減少しなかったりするかというと、世帯数がコンスタントに増加していることが理由の一つに挙げられます。
先ほどの家庭部門のグラフの世帯数の線を見ると、世帯数がずっと増加していることがわかりますね。
世帯というのは、総務省統計局によると「住居と生計を共にしている人の集まり又は一戸を構えて住んでいる単身者」のことで、世帯数が増加している原因には核家族化や単身世帯の増加があります(https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/users/yougo/yougo2.html)。
昔は「サザエさん」のように、3世代で暮らしているという家族も珍しくはなかったようですが、現在ではなかなかそういう家族は見かけないことを考えるとイメージしやすいかと思います。
これから、2世代・3世代で暮らす家族というのが急増するというのはなかなか考えにくく、これからもしばらくは世帯数の増加が続くのではということが考えられます。
ちなみに、家庭部門のエネルギー消費量は「世帯当たり消費量×世帯数」で表すことができます。
つまり、これからしばらく世帯数の増加が続くことが考えられるということは、家庭部門のエネルギー消費量を減らすためには世帯数の増加率以上に世帯当たりのエネルギー消費量を減らさなければならないということになります。
しかし、省エネ家電を買う以外にどういうことができるのでしょうか?
エアコンを使わない? 太陽光パネルを屋根の上に設置する?
次は、4年間大学で建築を学んだ私が、授業を聞いたりゼミに参加したりした中で一番効果的だろうと思うものについてお話ししたいと思います!
家庭内のエネルギー消費を減らすためには?
下のグラフは、家庭内のエネルギー消費の内訳です。
個人的に一番驚いたのは、冷房と暖房の割合の差です!
これを見ると、夏に環境に悪いから冷房は控えよう!と無理しても、熱中症など体調が悪くなるという危険の割に環境への効果は小さいことがわかりますね……危険なので、無理はしないようにしましょう……!
逆に、暖房の使用量を減らすことができればかなりエネルギー消費量の削減に貢献できそうな気がしますよね。
でも、寒い日に暖房をつけずに厚着だけで耐えるなんて、考えただけでも辛い……。
そんな時に思い出したいのが「断熱」という言葉。
最近はよく聞くようになった言葉かとは思いますが、中でも注目したいのは家などの建物の壁の外に断熱材を配置する「外断熱」です。
壁の内側に断熱材を配置する「内断熱」は昔からあり、外壁が厚くならない(外断熱の場合は外壁が厚くなってしまいます)、コストが抑えられるなどのメリットもありますが、部屋ごとに温度差が生じてしまう、気密性が低いという欠点がありました。
「外断熱」は建物を丸ごと断熱材で覆ってしまうようなものなので、家全体が暖かく、気密性が高い、つまりエネルギーが逃げにくいということになります。
エネルギーが外に逃げにくいというのは、部屋が暖まったらエアコンを切っても暖かいままでいられるというイメージでしょうか。
外壁が厚くなってしまうため、特に都市部においては部屋が狭くなってしまう、コストがかかるというデメリットもありますが、電気代の節約にもなるので長い目で見ればお得かもしれません。
”ZEH”って知っていますか?
もう一つ、皆さんに紹介したいものがあります!
その前に、下のグラフをご覧ください!
これは、家庭部門におけるエネルギー源別消費のグラフになります。
オール電化などの影響もあり、半分くらいが電気となっています。
この電気がまるまるごそっと(自宅での太陽光発電などにより代替することで)なくなってしまえば、環境にもいいし電気代もかからなくなるしで一石二鳥だと思いませんか⁉︎
そんなうまい話あるわけないでしょ〜と思ったそこのアナタ!
それに近い考え方のものがあるのです!
”ZEH”(ゼッチ)って聞いたことがありますか?
これは省エネ住宅の一種なのですが、私が大学1年生の時の授業で初めてこの話を聞いた時、とても感動した記憶があります。
”ZEH”とは”Net Zero Energy House”の略称で、資源エネルギー庁のZEHに関するページによると「外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、効率的な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」のことです。
ポイントは”年間収支をゼロとすることを目指す”ということで、そのためのポイントとなるのが①省エネ、②創エネ、③蓄エネの3つです。
下の図のように、高断熱+高性能設備で省エネを実現し(①)、屋根の上などに太陽光パネルを設置する等することでエネルギーを創り(②)、創った電気は蓄電池などに蓄えます(③)。
この3つのポイントにより、年間収支ゼロを目指すのです。
大学1年生の頃の私はこの話を聞いて、「夢のような家だわ! どうしてみんなZEHに住み替えないのかしら?」と思ったのですが、どうやら新築の4分の3がZEHではないそうなのです。
その理由は2つ考えられ、1つはZEH型の住宅を建てるには今までの普通の住宅を建てるよりもコストがかかるということ、もう1つはそもそもZEHについて知っている人が少ないということです。
コストに関してはZEH型住宅の普及により費用も少しずつ下がってくると考えられますし、電気代がほとんどかからなくなる(と思われる)こともあるので、将来的にはこの問題は解決すると思われます。
しかし、問題はZEHについて知っている人が少ないということです。
もしかすると、最近の家庭科の授業ではZEHについて習うかもしれませんが、聞き流していることも多く、結局知らないままなんてことも多々あるのではないでしょうか(私は大学生になるまで聞いた記憶がありませんでした……)。
この記事を読んでZEHに興味を持った人がいれば、ぜひもっと詳しく調べてみたり周りの人と話してみたりしてください!