今日は、お得かどうかを考えてみます。
こんにちは! お茶大リケジョ部のかすみです。
突然ですが、皆さんに質問です。
あなたは友達と街を歩いている途中でチョコバナナを売っている屋台をたまたま見かけました。
チョコバナナが無性に食べたくなったので、チョコバナナを買おうと屋台に向かいました。
屋台の看板にはチョコバナナ1本100円とありましたが、屋台の人によると、追加で50円払い、屋台の人とじゃんけんをして勝てばもう1本もらえ、負ければ特に何ももらえないそうです。
つまり、50円払って勝てばチョコバナナが1本あたり75円に、負ければ150円になるということです。
あなたは、じゃんけんに挑戦しますか? しませんか?
チョコバナナがめちゃくちゃ好きだから挑戦する!という人もいれば、1人で2本も食べないし挑戦しない!という人もいるかもしれませんが、ここでは『挑戦するのはお得かどうか?』ということにポイントを置いて、じゃんけんに挑戦するかしないかを考えたいと思います。
さて、どうやって考えようかな?
オーソドックスに、確率で攻めるか?
まず思いつくのは、勝つ確率を考える方法ではないでしょうか。
勝てば得をし、負ければ損をするのだから、勝率を考えればお得がどうかわかりそうですよね。
単純に考えると、勝ちと負けしかないので、勝つ確率は1/2……?
いやいや、ちょっと待って。本当に? あいこの存在、忘れてない?
結果的に勝つ確率は1/2かもしれませんが、ちょっと考えてみることにしましょう。
じゃんけんの結果といえば、勝ち・あいこ・負けの3つ。
つまり2人でじゃんけんをした時、自分が勝つ確率は1/3、あいこになる確率も1/3、自分が負ける確率も1/3。
ということは、2回目に自分が勝ってじゃんけんが終わる確率は
(あいこ→自分が勝つ)
だし、3回目に自分が勝ってじゃんけんが終わる確率は
(あいこ→あいこ→自分が勝つ)
だし、n回目に自分が勝ってじゃんけんが終わる確率は
(あいこ→あいこ→あいこ→……→自分が勝つ)
となります。
おっと、なんだかややこしく見えますね……。
何回目でもいいので、とにかく自分が勝つ確率を求めるためには、上で出した自分が勝つ確率を全部足せばOKです。
つまり、何回目でもいいのでとにかく自分が勝つ確率は、
となります。
なんだか大変なことになってきたぞ……。
数学をどこまで習っているかで、ここから先に進めるかどうかが変わってきます。
「数列」の「(無限)等比級数」を習っていれば、ここからどうなるかがきっとわかるはず。
この式は、初項が1/3、公比も1/3の無限等比級数です。
初項a、公比rの無限等比級数
は、-1<r<1のとき、a/(1-r)に収束するというのを思い出してみましょう。
この式に初項a=1/3、公比r=1/3を当てはめてみると、
となり、何回でもいいので、とにかく自分が勝つ確率は1/2に収束する、つまり自分が勝つ確率はほぼ1/2というわけです。
同様に考えれば、負ける確率も勝つ確率同様ほぼ1/2。
どうやら、確率だけ考えれば、お得でも損でもないようです。
なんだかおもしろくない結果になってしまったので、ちょっと別の考え方を取り入れてみましょう!
期待値を調べるという攻め方も。
みなさん、『期待値』という言葉は聞いたことがありますか?
私は高校の授業で習った記憶が全くないのですが(聞き逃しているだけかもしれません……)、私が受験生だった頃に解いたセンター試験の過去問には出ていたような気がするし、もしかすると今の高校数学の範囲には含まれているかもしれません。
期待値というのは『1回の試行で得られる値の平均値』のことで、『得られうる全ての値とそれが起こる確率の積を足し合わせたもの』だそうです。
……と言われても、どういうことかよく分からないと思うので、実際にチョコバナナの例で考えてみたいと思います。
チョコバナナの例の期待値を求めることで何が出てくるのかというと、”(十分な回数試行できる=十分な回数50円払ってじゃんけんをする場合の)チョコバナナ1本あたりの値段の平均”です。
じゃんけんに勝つ確率が(ほぼ)1/2で、その場合は1本当たり75円、負ける確率が(ほぼ)1/2で、その場合は1本当たり150円なので、期待値は
つまり、112.5円となります。
さて、ここでもともとのチョコバナナ1本の値段が100円だったことを思い出してください。
例えば毎日1本ずつ、じゃんけんなしでチョコバナナを買った場合、チョコバナナ1本の平均の値段は100円のままです。
しかし、毎日1本買い、さらに50円払ってじゃんけんをした場合、チョコバナナの1本の平均の値段は112.5円となっていて、12.5円高くなっていることがわかります。
期待値で見えてくることとは?
「なーんだ、損じゃん!」と思ったそこのあなた、さっき”十分な回数試行できる場合”とこっそり書いてあったのを思い出してください!
そう、この期待値を求めることででてきた平均の値段を参考にできるのは、十分な回数試行できる場合、つまり50円を払ってじゃんけんをする、という試行を何度も行う場合です。
たった1回のチャレンジであれば、結果は勝つか負けるか、確率は半々なので、お得か損かはなんとも言えません。
単純に確率で見る場合と期待値を求める場合と、2通りの考え方でお得か損かを見てみましたが、何度もチャレンジをするわけでないのであれば、じゃんけんに挑戦するかしないかは自分次第、という釈然としない結果になってしまいました……。
しかし! 期待値を求めることで面白いことが見えてくることに気づきましたでしょうか?
今までチョコバナナを買う側に立って考えてきましたが、ちょっと視点を変えて、チョコバナナを売る側に立って考えてみましょう。
チョコバナナを売る側になれば、じゃんけんチャレンジを十分な回数試行できるはずなので、期待値を目安にできるわけです。
1回あたりの結果を見ると儲かるのか損するのかよくわかりませんが、期待値を見てみると、じゃんけんチャレンジをした方が普通に売るよりも1本あたり12.5円高くなっているということは、チャレンジしてもらえればしてもらえるほど儲かるということになります。
買う側にとっては50円得するか損するか、確率は半々のちょっとした賭けであっても、売る側にとっては理論上確実に儲かる作戦な訳です。
なかなかうまくできていて、面白いと思いませんか?