こんにちは! お茶大リケジョ部のかすみです。
みなさん、『セレンディピティー』という言葉を知っていますか?
何だか妖精みたいな可愛らしい響きの言葉ですが(笑)、セレンディピティー(serendipity)とは探してもいない貴重なあるいは素晴らしいものを見つけられる才能のことだそうです。
広辞苑には『(お伽話「セレンディプ(セイロン)の三王子」の主人公が持っていたとことから)思わぬものを偶然に発見する能力。幸運を招き寄せる力。』とあります。
ここでポイントとなるのは”才能”、”能力”、”力”という言葉。
何かを偶然に発見したという”現象”を指しているのではなく、何か偶然起こったことから洞察により何かを発見する”能力”のことを指しています。
化学、医学、生物学の分野で様々な業績を残したルイ・パストゥールは、リール大学学長就任のスピーチの際に『観察の領域において、偶然は構えのある心にしか恵まれない』と述べていますが、この”構えのある心”が偶然の発見には必要ということです。
……と言っても、わかりにくいと思うので、身近なものを例にセレンディピティーの例を2つ挙げてみたいと思います。
ひっつきむしがマジックテープに!
一つ目は、現代の生活には欠かせない、マジックテープ。
いろいろなところに使われてますよね。
子供の頃の方が、服や鞄、靴におもちゃとマジックテープにお世話になることが多かったような気がしますが、今でもパソコンなどのケーブルを束ねる際などに大活躍します。
そんなマジックテープも、スイスの電気技師 ジョージ・ドメストラルのセレンディピティーによる発見がなければ、存在しなかったかもしれません。
ところで、みなさんには上着やズボンにひっつきむしがいっぱいついてしまい、なかなか取れず、イライラした経験はありませんか?
(ひっつきむしというのは、”むし”とついていますが、皮膚や衣服に引っかかったり張り付いたりする植物の種子や果実のことです。)
田舎に住んでいないとなかなかない経験かもしれませんが、私も小さい頃に草むらに入ってはひっつきむしがズボンについてしまってイライラしていた記憶があります(ひっつきむしを投げ合って遊んだ記憶もあります(笑))。
私の場合は、ひっつきむしがズボンについてイライラした!というところで終わってしまいましたが、ジョージ・ドメストラルはそこでは終わりませんでした。
イライラしたかどうかはさておき、「どうしてこんなにひっつくのだろう」と思った彼は、オナモミ(ひっつきむしの一種)を顕微鏡で観察してみることにしました。
そして、オナモミには無数の鉤が並んでいて、その鉤が衣服の生地や犬の毛の輪に入り込んでいるのを発見したのです!
これは何かの役に立つだろうとヒントを得たジョージは、発見した構造をもとにしてマジックテープを作り出したのでした。
もし、ジョージ・ドメストラルが顕微鏡を覗いて発見した構造からひらめかなければ、そもそも顕微鏡で観察しようと思い立たなければ、マジックテープは生まれていなかったかもしれないのです……!
お風呂でもセレンディピティー
二つ目は、浴槽から溢れる水を見て不規則な物の体積を測る方法を思いついたアルキメデスの例です。
アルキメデスは、王冠が純金であるかどうかの鑑定方法を悩んでいた時に、たまたま公衆浴場で水の中に足を踏み入れ、浴槽から溢れる水を見て、その溢れる水の体積は自分が今踏み入れている足の体積に等しいということに気づいたのでした。
つまり、水をいっぱいに張った容器に王冠を入れ、溢れた水の体積を測れば、王冠の体積がわかる。それが、金細工師に渡した純金の体積と同じであれば、王冠は純金だ、違っていれば金細工師が他の金属を混ぜたということだ、ということに気づいたのでした。
小学生の時に、うっかりお湯止め忘れた、お湯でいっぱいのお風呂に頭まで浸かって浴槽から出てみると、お湯が随分と減っていた経験があります。
しばらく考えて、これが自分の体積なのか!と若干ショックを受けましたが(笑)、これはセレンディピティー的発見への第一歩だったのかもしれない……と考えるとワクワクしますね。
ところで、私が『セレンディピティー』という言葉に出会ったのは、中学生の頃でした。
中学生の頃、クリスマスプレゼントに本をリクエストした私。
クリスマスの日の朝にゲットしたのは『セレンディピティー ──思いがけない発見・発明のドラマ──』(R・M・ロバーツ著 安藤 喬志訳 化学同人)というちょっと分厚めの本でした。
中学生の頃は「さっぱりわからないし、面白くない……」と思いながら読んでいましたが、先日ふと思い出して読んでみると、なかなか面白くて少しずつ読み返しています。
とにかくたくさんのセレンディピティーが紹介されているので、今回の記事を読んでセレンディピティーに興味を持った人は読んでみてはいかがでしょうか?