Q:現在の仕事内容を教えて下さい。
私はコーセー研究所に所属しています。研究所の仕事を大きく分けると、基礎研究と製品研究ですが、入社してすぐに配属されたのは基礎研究室で、品質保証業務や皮膚科学の研究などを行っていました。現在は製品研究室で「ヴィセ」や「エスプリーク」などのメイクアップ商品、特にアイシャドウの処方開発をしています。
普段の仕事では、パソコンの前で処方を考えたり、最新の論文を読んだりすることもありますが、私は身体を動かすのが好きなので、実際に原材料をいろいろ混ぜてみて、どんな色になるのかをモノを見ながら考えて、「もっとこうしたい」とか「ちょっと違うなあ」とか、トライ&エラーを繰り返す時間が長いですね。もちろん試作品を自分で試してみることもありますよ(笑)。
Q:研究所では具体的にどんな仕事をしているのですか?
まず本社の商品企画から「こういうコンセプトのものをつくりたい」という要望があり、それをもとに研究所がサンプルをつくります。その後、実際にできあがったサンプルを触りながら、企画の担当者と何度も擦り合わせていきます。目標の品質を達成すると、工場の方と一緒に量産化について検討します。そこまでが私たちの基本的な仕事になりますが、コーセーは研究所、工場、本社との風通しがすごくいいんです。研究所では基本的に本社の商品企画から提案されたものをつくるのがメインですが、反対に研究所でビーカーを使って作業していた時に気がついたアイデアをもとに「こうしたらもっといいものがつくれますよ」というのを逆提案することもできます。同じように工場から研究所に提案が来ることもあります。すごくアットホームな雰囲気で働きやすいですね。
他にも研究所の仕事はいろいろあります。例えば、製品が市場に出た後にお客さまから「こうしてほしい」というフィードバックがあったときは、再度処方を検討し、より良い商品を提供できるようにしたりします。また「もっとこういうのがあればいいな」というのがあれば、自分でデパートに出かけて見に行くこともありますし、他社さんの製品を研究することもありますよ。化粧品に関することだったら幅広くやっています。
Q:Rikejoの読者の中でも化粧品会社はすごく人気がある就職先ですが、化粧品メーカーを目指す方にアドバイスをお願いします。
私は学生時代、化粧品の知識をつけなければいけないと思ったので、色彩検定やアロマ検定とかなどを受けていたのですが、今思えば、そういう必要はあまりなかったのかなって(笑)。もちろん、資格を取ることはいいことですが、じゃあ、それがないと就職できないかといえば、必ずしもそうではありません。それよりは、部活動でも美術館めぐりでもいいので、自分の経験を増やすようなことをするほうが大事だと思います。いろんな経験を積み重ね、見聞を広げることで、この仕事に必要な美的センスが培われていくと思います。
海外旅行に行って現地の方のメイクの方法を見るとか、顔を見るだけでも役に立ちます。またファッション誌を見て、最先端のトレンドものを感知する力を若いころに身につけることも大事だと思います。最近は、日本の中学生や高校生からも流行が広がることも多いので、中学生や高校生のときに、その時代のおしゃれを楽しむことも大事だと思いますね。
Q:最後に将来の夢を教えて下さい。
大きな夢はいつか海外で働くことですが、身近なところでは、好みの化粧品を使いたいけど、うまく使えない人のための商品をつくってみたいです。
例えば、「本当はこのアイシャドウを使いたいのですが、私のまぶたの形では似合わない」とか「この色は好きだけど、自分の年齢を考えるとためらってしまう」というケースがあります。そういう方のお悩みを解決できるような化粧品を開発したいです。
(取材・文=川原田剛 写真=神谷美寛)