Q:現在のお仕事を教えて下さい。
私は今、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として、ケニア森林公社で仕事をしています。森林公社は日本で言う林野庁のようなところです。
ケニアは、国家目標として2030年までに国の森林被覆率を現在の6%から10%に引き上げることを掲げています。そのためには、今ある森林を守りつつ、新しく森を造っていく必要があります。
私は当初、ケニア南東部のクワレという地域で森林保全の活動を行っていましたが、周辺地域の治安悪化に伴い、昨年の10月からはケニア中央東部のキブウェジという地域に移動してきました。キブウェジは緯度3度で標高も低くバオバブがボコボコと生えている乾燥地です。しかし、ここには小さな町があり人も住んでいます。人が住むことができる理由は、この地域に水源の森があるから! 私はその水源の森を保全する活動を行っています。
森林保全の活動といっても毎日森の中に入るわけではありません。普段は、森の近くに暮らす住民グループの集会へ出向き、彼らが森から木を伐りすぎずにより良い生活を送ることができるように、現地の材料から製作でき、薪をあまり使わない“改良かまど”や自分たちで薪炭材や野菜を得るための“アグロフォレストリー”などの技術指導を行っています。
今年に入ってからは、住民と一緒に『住民が住民のために生活改善を通じて森林保全を行うグループ』を設立し、組織として県に登録しました。
私は、住民が主体となって組織運営をすることができるように、彼らのサポートをしています。
Q:海外でのお仕事で大変なことは何ですか?
ケニアで仕事をするようになって、自分ではどうすることもできない治安悪化の問題に遭遇したり、寄生虫が足に入ってしまったり……と日本では考えられないようなトラブルに見舞われることが多々あります。
海外での生活は最初こそ新鮮ですが、住んでいれば辛いことや悲しいことにも出会います。そんなときは『私はなんでここに来たんだ?』と自分に問いかけるようにしています。
その答えはもちろん『世界で森づくりをするため!』です。
私の関わることのできるすべての人が森を大切に思ってくれるように、可能な限りの準備をして、笑顔で歩いていきたいです。
Q:今の仕事に興味を持ったきっかけは?
幼いころから、森林公園を歩くことや、テレビで野生動物の特集番組を見ることが好きで、将来は自然に関わる仕事に就きたいと考えていました。途上国の現状や国際協力の道に興味を持つようになったのは中学生のころ。スマトラ島沖地震で被災した子どもたちへ、国連児童基金(ユニセフ)を通じて募金したことをきっかけです。
その後、高校3年の夏休みにJICAが開催するセミナーに参加し、東南アジアの熱帯雨林破壊による生物多様性の減少問題に興味を持ち、森林保全の道を志そうと考え始めました。でも、大学の森林資源学科で森林を正しく利用すれば持続可能なことを学び、世界で持続可能な森づくりに関わりたいと考えるようになりました。
そんな中で、青年海外協力隊は実際に現場に立って地域の方々と森づくりに関われる仕事だと考えて、今の道を選択しました。
Q:最後に将来の夢を教えて下さい。
現在は大学院を休学して、『世界で森づくりをしたい!』という思いを胸に、現地の方々と活動していますが、草の根レベルの活動はできているものの、自分の手の届く範囲内でしか活動できていないのが現状です。
大学院復学後は、より広範囲で持続可能な森林を造林するためのノウハウを知るために、国際機関のインターンに参加をしたいと考えています。
将来は、専門家として現場と研究機関の懸け橋になりたいというのが今の夢です。現在、ケニアの小学校で環境教育の出張授業を行っていますが、10年後、20年後に私の授業を受けた子どもたちと一緒に仕事ができたらうれしいですね。
(文=川原田剛)