*一瞬の判断で患者さんの命をつなぎとめなくてはいけません
3次救急と呼ばれる、特に重傷な患者さんに対する救急医療を担当しています。
初療を担う救急医の役割は、命をつなぎとめること。一刻の猶予もない患者さんを前に、即座に治療法を判断して周囲に指示します。一瞬の判断によって容態が変わるので責任重大です。
特に当直時は医師の数が少ないので集中力が必要ですし、気合も入ります。普段はオンオフの切り替えがはっきりしていますし、最近は夜勤が減り体力的負担は軽くなりました。その分、精神的負担やストレスともうまく付き合っていかなくてはいけません。
交通事故や爆発事故による火傷、大量の薬物服用による自殺未遂など、対応するのはさまざまなケースです。交通事故で足を骨折しているだけに見えても、内臓を損傷していることも。はじめに超音波やCTを使って全身の状態を把握することが大切です。
*父の言葉で医療の道へ
医師になって3年目に救急医になり、それから12年経ちました。
親族で医療従事者はいませんでしたが、肝臓を患い入院生活を送っていた父の「将来、医師になってくれたらうれしい」という言葉でこの道に進みました。
中学から通っていた近所の個人塾の先生のおかげで理数科目の成績が伸びたことも影響しています。
はじめは内科志望だったのですが、研修医時代、大事故で10代の男子が瀕死の状態で搬送されてきました。心臓マッサージをしながらの大手術。本当に危険な状態でしたが、先輩医師の懸命な治療のおかげで、数ヵ月後に車椅子に乗って退院していきました。
こんな奇跡があるのだと、自分も救急の現場でお手伝いしたいと思ったのです。
当時は今と違い女性の救急医がほとんどいなかったので周囲には心配されました。
*重症だった患者さんが元気になっていくところにやりがいを感じます
現在は同時に集中治療室(ICU)も担当しています。救急に運ばれてきた方が、そのまま自分の担当になることもあります。
初療では重症だった患者さんが元気になっていくところにやりがいを感じるので、今後は集中治療の道も究めていきたいです。
( =十倉和美 =神谷美寛)