女性が活躍!ケミカルエコロジー
― 昆虫や植物の研究分野で、女性研究者の割合は?
私が研究しているのは、ケミカルエコロジー(化学生態学)という分野で、化学物質が生態的にどんな役割をしているのかを調べる分野です。それを含めた生態学全体の分野では、女性の割合は比較的多いと思います。最近は特にパワフルな女性が増えていると感じています!身体的にも精神的にも、女性の学生さんはタフだなと感じることがよくありますね~。セミナーでも、しっかり準備をしてくる、やる気のある女性に出会うことが多いです。
― 研究において、女性ならではの苦労はありますか?
女性ならではというのは、あまりないですね。野外での調査が多く、例えば国内では奄美地方など南方に行くことも多いのですが、行ってみたら花が咲いていなかった、とか。特に夜の調査が多いので、ハブとかちょっと変わった人に遭遇したり・・・。
実験上の失敗は、男性・女性に関わらず、どんな分野でもあることなので、そこは人並みだと思います。
― 野外調査のマストアイテムを教えてください
帽子とマスクで完全防備をします!虫やヘビ対策でもあるんですけど、やっぱり紫外線対策として。忍者みたいな格好になりますが「私は紫外線を浴びないわ!」っていう強い心を持って挑んでいます(笑)研究のマストアイテムは、高枝切りバサミですね!
完全防備の岡本さん(写真提供:岡本朋子さん)
― ちまたで昆虫食が流行っていますが・・・
たまに調査で行くラオスでは、昆虫を食べます。海がないので、動物性のタンパク質は川魚や虫で補っています。それを食べていたので抵抗はないですが、日本にいて虫が食べたいか?というと・・・(タンパク質の摂取としては)効率が悪いし、普通に肉や魚でいいかなと思いますけど、虫も出されたら食べます(笑)
(ちなみに、ラオスは餅米が主食で、虫は副食として佃煮やスープにして食べるそう。苦みや辛みを好み、道ばたの草や虫も食べる。夜、街灯に照らされた看板に虫が集まると、そこに子ども達もワ~って集まってきて、ガシっと掴み、ムシり、ガブッ・・・ジッジジッジ(虫の羽音)という衝撃の光景も日常茶飯事だとか。虫=食料=お金、ワイルドに虫を捕まえて市場で売っているそう。)
― なぜラオスまで調査に行くのですか?
私が研究している植物は、基本的には熱帯域に分布しているので、日本が北限にあたります。南に行けば行くほど種数が増えていくので、南に下ってはサンプリングして(虫を食べて)、戻ってくるというわけです。すごく楽しいですよ~!
好きなことを究めたら、リケジョになっていた
この分野にいると、子どもの時から昆虫少年・少女だった方が多いんですけど、私は大人になるまで生き物(特に昆虫)は嫌いでした。元々は数学が苦手で理科も特に好きでもなかったです。でも、一度、死ぬかもしれない体験をして(九死に一生のエピソード:【1】私がリケジョになった理由 )、そこから大学に興味の対象を探しにいって、大学の講義がきっかけで、植物と昆虫の相利共生にはまりました。
数学ができなくても、理系を目指すことはできますし、自分が好きなことをやっていたら、気がついたら理系になっていたというのもいいのかなと思います。ただ、数学も英語も、できるにこしたことはなく、研究でも必要になってきますが、必要になれば勉強しますし、必要なら勉強も苦にならないと思います。
英語も・・・センター試験では、とりあえず先にマークシートを適当に塗ってから問題を見るくらい、苦手でしたけど、それでも今は論文も書いていますし、やらなきゃいけなくなったら、やるしかない!ということです!ただ、大人になってから勉強するのは若い時よりも、かなり大変です。学生さんには今できることならやっておくと後が楽だよ、と伝えたいですね(笑)
― 岡本さん、貴重なお話をありがとうございました!!!
■ vol.1 私がリケジョになった理由
■ vol.2 あなたなしでは生きられない
■ vol.3 “花の匂い” に迫る
独立行政法人森林総合研究所は、森林・林業・木材産業に関する総合的な研究機関。
森林を育て、有効に活用するため、微生物、植物、昆虫、動物を含め、環境の保全から資源の活用まで幅広い研究が行われている。
公式HPはこちら:http://www.ffpri.affrc.go.jp/index.html
● 岡本さんプロフィール
日本学術振興会特別研究員 PD/
独立行政法人 森林総合研究所 森林昆虫研究領域
大学時代の専攻:京都大学大学院 人間・環境学研究科 相関環境学専攻
オフの日の過ごし方:サイクリング、編み物、消しゴムはんこ作成など
趣味:貝拾い、珈琲、料理
● ライター プロフィール
知りたい・伝えたい、が原動力の「つたえるリケジョ」
同じことでも伝える人や伝え方によって、生み出されるものが違うからこそ、
究極のコミュニケーションって何だろう、と思います。企画力、表現力を磨きたい。
かつての専攻はバイオテクノロジー、研究パートナーは大腸菌。
農薬&種苗メーカー、科学館勤務を経て、ライター・編集者に。