五十嵐さんの質問に答えるマイクロンの女性エンジニアたち(撮影のため一時的にマスクを外しています。撮影:河西大地、(c)講談社)

半導体のリーディングカンパニーとして、メモリー分野で人工知能や5Gといった最先端分野の進歩を支えるマイクロン。ここ数年、女性のエンジニアや管理職が増え続けています。

マイクロンジャパンは『Great Place to Work』が発表した“2022年度版 日本における「働きがいのある会社」ランキング ベスト100”の大規模部門で第14位に選ばれていますが、多くの従業員が働きがいを感じる理由はどこにあるのか?

サイエンスエンタテイナーとしてさまざまなメディアで活動する五十嵐美樹さんが、マイクロンの日本での生産拠点・広島工場で働くふたりの女性エンジニアにお話を聞きました!

五十嵐美樹(いがらし・みき)
サイエンスエンタテイナー・科学のお姉さん。
1992年東京都生まれ。上智大学理工学部機能創造理工学科卒業後、国内の大企業でエンジニア職を経て、東京大学大学院修士課程及び東京大学大学院科学技術インタープリター養成プログラム修了。現在は子どもから大人まで幅広い層に向けた実験教室やサイエンスショーを全国各地で主催、講師を務める。特技のヒップホップダンスで魅せる「踊るサイエンスショー」は好評を博している。
 
荒井麻里(あらい・まり)
Photo装置エンジニア
入社:2020年4月
 
香月柚香(かつき・ゆか)
データサイエンティスト
入社:2020年10月

五十嵐:おふたりは今、さまざまな最先端の技術の基盤になっている半導体の製造に携わっていますが、大学時代はどんな研究をされていたのですか?

荒井:私は大学時代、生物学を専攻し、人の遺伝にかかわるタンパク質の働きについて研究していました。そのタンパク質が欠損していると、不妊症を引き起こすと言われているのですが、身体の中でどういう働きをしているのかがわかっていませんでした。それを解明する研究のために、生化学の実験をメインにしていました。

香月:私はアメリカの大学に進学したのですが、コンピュータサイエンスの勉強をしていました。大学院には行かなかったのですが、大学ではバイオインフォマティクス(生物情報学)の研究をしていました。

五十嵐:生物学と情報学のふたつの学問が融合した最先端の研究ですね。

香月:私は、生物は全然勉強したことがなかったんです(笑)。それでもコンピュータサイエンスの知識だけでもなんとかやることができました。

半導体関連とは異なる専攻分野を学んできた人でも入社後に活躍できると話す荒井さん(写真右)と香月さん(写真左。撮影:河西大地、(c)講談社)

五十嵐:大学での研究を経て、おふたりが就職の際にマイクロンを目指された理由を教えてください。

荒井:私は生物学の研究を進めていくうちに、実験の時にマンパワーを削減して、機器をより高度なものにすることによって効率化を進めることに興味を持ちました。それで調べてみると、よりよい実験機器を作るためには半導体が重要だと知り、マイクロンに就職することを決めました。

五十嵐:もともと生物系の研究をして、機械系に興味が移ってきたんですね。

荒井:そうです。職場には私のように異分野から来た方がいます。マイクロン全体では工学系の出身者が多いと思いますが、私の周りでは農学や生物を学んだ方もいらっしゃいます。

五十嵐:マイクロンでは多様なバックボーンを持った方々が、半導体というひとつの技術に携わっているんですね。香月さんはいかがですか?

香月:私はどうしてもデータサイエンティストになりたくて、アメリカのアイダホにある大学に通っていました。マイクロンは本社がアイダホにありますし、地元のいろんなイベントに協賛していたこともあり、すごく有名でした。それに大学時代にマイクロンで働いている方に出会ったこともあり、親しみがありました。それでマイクロンに就職活動して、希望通りにデータサイエンスの内定をいただくことができました。

五十嵐:おふたりは現在、どんなお仕事をされているのですか?

荒井:私は現在、露光装置を使ってウエハーに回路パターンを転写する工程、リソグラフィと呼ばれる要素プロセスの部署に所属しています。そこで用いられている装置のレシピの最適化が主な業務です。レシピの最適化とは、現在使っている薬液を新しいものに変更することでコスト削減を目指したプロジェクトになります。目標達成のために日々、実験を繰り返し、その結果をレポートにまとめています。実験の結果を考察してレポートにまとめあげていく力、結果をもとにどうやって改善していけばいいのかと考える力、スケジュールしていく力などは大学や大学院での研究を通して学んだことが生かされています。

五十嵐:荒井さんは入社して何年目になるのですか?

荒井:3年目になります。昨年までは別の部署にいましたが、2年目になった時にあるKPIのオーナー(※後注)を任せてもらいました。最初のうちは本当に不安だったのですが、周りの方々に相談しながら進めることができました。マイクロンでは上司の方がすごく話しやすい距離間で接してくれます。困ったことがあったらすぐに相談して判断を仰ぐことができたので、円滑に業務を進めることができました。

(※ KPI<重要業績評価指標>=チームの目標となる数値目標に責任を持つ立場)

チームの目標となる数値目標、KPIに責任を持つポジションを任されたという荒井さん(撮影:河西大地、(c)講談社)

五十嵐:入社2年目で大役をまかされたのですね。そうした環境があるから、若い人たちが生き生きと働かれているんですね。それでは香月さんのお仕事内容を教えてください。

香月:私はデータサイエンティストをしています。私の部署は、基本的に社内の他の部署の方から依頼を受けて、手動でやっている解析を自動化したり、機械学習を使用した解析を行ったり、システム開発をすることが主な仕事になります。具体的には時間削減を目的にしたものが多いですね。例えば、解析に時間がかかって問題を抱えているという依頼があれば、データサイエンスを使ってソリューションを考え、機械学習で何かできることがあるのかを調査して、最終的にはシステムを開発まで行います。

五十嵐:機械学習については、大学でも学んでいたのですか? 

香月:いいえ、実は全然やっていませんでした(笑)。大学時代はプログラミングをしたり、データベースからアプリを作成したりしていました。その経験は今も仕事ですごく役立っていますが、一緒に働いているメンバーの中には大学でプログラミングをまったく経験していなかった方もいます。

五十嵐:では、機械学習などの最新の技術はどうやって取得しているのですか?

香月:マイクロンでは『コーセラ(Coursera)』というオンライン教育サービスを無料で受けられますし、『マイクロン・ユニバーシティ』という専用のオンライン教育プログラムもあります。そこでデータサイエンスや機械学習などの最新技術を基礎から学ぶことができます。私の場合は、自分の仕事のプロジェクトを進めながら、平行してオンラインで勉強をしていきました。実際、オンラインで学んだことは仕事ですごく役立ちましたが、機械学習はどんどん成長している分野です。私自身、もっと勉強しなければならないと思っています。

荒井:マイクロンはスキルアップの支援制度が充実しています。私はオンライン英会話の受講制度とRPAと呼ばれる自動化ツールの学習を利用しています。自発的にスキルアップできる機会が設けられているのは、現状に満足せず最先端で活躍し続けているマイクロンの強みだと思います。

五十嵐:実際に業務に役立つ知識やスキルを基礎から学べる環境があるので、若いエンジニアや様々なバックグラウンドを持った方が活躍できるんですね。納得です(笑)。次は今の仕事のやりがいと、逆に大変なところもあったら教えてください。

荒井:自分が評価して、承認されたプロセスが実際の商品にも使われた時にはやりがいを感じます。でも私は生物学という異分野から来たということもあり、最初のうちは自身の部署の知識を獲得するのは大変でした。さらに半導体を製品としてお客様に提供するとなると、イールドに対する知識も必要となってきます。イールドとは日本語で言えば歩留まり、半導体を製造したときの良品の割合のことです。

イールドに関わる知識を得るためには、自身の部署だけでなく、他部署のことも知らなければなりません。そこは大変でしたが、マイクロンではシニア・エンジニアの方が若手に教育をしてくれる機会がありますし、オンラインで気軽に聞けたりする環境もあります。若手エンジニアがわからないことを周りが受け入れてくれるので、すごく仕事がしやすいです。

ディスカッションに参加する香月さん(撮影:河西大地、(c)講談社)

香月:私の作ったシステムやダッシュボードで、これまで手動で15時間かかっていた解析作業が1時間に短縮されたことがありました。それを聞いた時は「やった!」と思いましたね(笑)。あと半導体の業界では、荒井さんが話した歩留まりというのがすごく大事です。歩留まりの向上に貢献できた時はうれしいです。

私たちの部署ではデータベースを活用してシステムやダッシュボードを作っていきますが、データベースには大量のデータ、いわゆるビックデータが保存されています。それを効率よく扱っていくのは大変なことです。でも、わからないことがあったら周りの人に聞けば、皆さん気さくに教えてくれますので、すごく助けられています。

五十嵐:マイクロンでは『DEI』、ダイバーシティ(多様性)、イコーリティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)の3つを尊重する企業文化を大切にしているとうかがっています。その推進のために、『従業員リソースグループ(ERG)』という、有志による社内組織の活動も盛んだとのことですが、おふたりは何かERGの活動に参加されたり、関わったりしているのですか?

荒井:たくさんあるERGの活動の中で、若いエンジニアを育てる『マイクロン・ヤング・プロフェッショナル(MYP)』というグループがあります。そこでは年齢や性別、国籍などに関係なく、さまざまな方が有志で参加し、ボランティア活動やイベントなどを行っています。私もMYPに所属している友人に誘われて、しまなみのクリーンアップに参加しました。これまでボランティア活動の経験はなかったのですが、やってよかったですね。マイクロンでは社員のボランティア活動や地域貢献活動など積極的に支援していますので、社会的な活動に参加がしやすいんです。

香月:私は『Mosaic(モザイク)』という異文化の理解を深めるというグループから、ハラルフードを使ったレストランで簡単にテイクアウトのメニューが注文できるようなシステムがなくて困っているという相談を受けました。そこでデータサイエンスの知識を生かして、簡単に注文できるシステムを作り、ウェブサイトを立ち上げて、ERGに貢献させていただきました。

五十嵐:自分の技術を生かしてERGに貢献していくということもできるんですね。DEIやERG以外にマイクロンの職場環境の良さ、他の企業にはない素晴らしさはありますか?

荒井:私が感じるのは、変化をよしとする文化があることです。例えば定期的にメールで「どういうことを改善してほしいのか」とアンケートが送られてくるので、意見が言いやすいんです。しかも意見を聞くだけでなく、そのアンケート結果に基づいて、社内がどんどん変化していきます。そういう姿勢が見られるのは他の企業にはないところだと思います。

香月:私も荒井さんと同じ意見です。上司と週に1回ぐらい、1on1(ワンオンワン=一対一)のミーティングがあるのですが、その時に必ず「チームでも、マイクロン全体でも、どこをどう改善したほうがいいと思いますか?」と聞いてくれますので、自分の意見をちゃんと会社に対して言えます。あと外資系の企業なので個人を尊重してくれますので、自分らしくいられるのもマイクロンのいいところだと思います。

荒井:同期が多いこともマイクロンの特徴です。最近では、毎年約150人の新入社員が入社しています。他部署にも多くの同期がいるため、刺激し合い、切磋琢磨し合える仲間と働ける環境にとても魅力を感じます。同期とはプライベートでも仲が良く、今でもカフェに行ったりBBQやドライブ旅行をしたりと、休日も楽しく過ごしています。

ひとりひとりが尊重されていると感じると話す荒井さん(写真右)と香月さん(写真左。撮影:河西大地、(c)講談社)

五十嵐:理系を学んでいる学生の中には、将来どんな技術に関わる仕事に就こうかと迷っている人も多いと思います。リケジョの後輩たちへ就職活動についてのアドバイスをいただけますか?

香月:就活中にはいろんな企業の面接を受けると思いますが、希望通りに行かないこともあるかもしれません。私も何社も落ちて、かなり落ち込みましたが、落ち込むのは当たり前です。それでも前を向いて頑張ることが大事だと思います。あとは、やっぱり準備が重要です。面接の時に自分の研究内容をきちんと、わかりやすく説明できることが大事です。私のようにデータサイエンスに関わる仕事に就きたい方は、自分のウェブサイトを作ってアピールするのもいいと思います。実際に私はそうしました。

荒井:説明会や面接で気になったことはためらわずに質問することが大事だと思います。質問しなかったらまず相手の印象にも残らないだろうし、質問することで「この子はうちの会社に来たいんだな」と採用担当者も感じ取ってくれるはずです。わからないことがあったら何でも積極的に聞いてみてください。

五十嵐:最後におふたりのエンジニアとしての夢を教えてください。

荒井:先ほどマイクロンは変化をよしとする会社だと話しましたが、その変化にちゃんとついていって、将来的にはむしろ変化を引っ張っていけるエンジニアになりたいです。あとマイクロンでは最近、全社員のデジタルスキルを底上げしていこうという活動が始まりました。もちろん香月さんの所属する部署がもっとも専門的なのですが、私もデータを扱うエンジニアとしてどんどんスキルアップしていきたいと思います。

香月:私はデータサイエンティストになりたくてマイクロンに入社し、夢を叶えることができました。今は機械学習エンジニアになることが目標です。マイクロンには機械学習のエンジニアに必要な勉強ができる環境があるので、それを生かしてどんどん学んで、優秀なエンジニアになれるように頑張りたいと思っています。

五十嵐:おふたりとも入社されてからも学ぼうという姿勢が素晴らしいですし、マイクロンには社員の成長を支える環境があるということにも感激しました。もうひとつ印象的だったのは、マイクロンは変化を受け入れる会社だということです。社員一人ひとりの意見を聞いて、経営に反映させていくという姿勢は時代に沿っていると感じました。最先端の企業と社員の在り方を見たような気がします。今日は貴重な話をどうもありがとうございました。

提供/マイクロンメモリ ジャパン株式会社
https://jp.micron.com/in-japan/jobs

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(構成・文/川原田剛、撮影/河西大地)