子供たちが科学に興味をもつためには、間違いや失敗も受け止め、大人が寄り添うことが大切
布施谷さん
私、小さい子供たちにとって、大人がどうかかわるかっていうのはすごく大きいと思うんです。
以前、科学館でアルバイトをしていたとき、たくさんの親子連れを見ていて興味深かったのが、親御さんの接し方。展示を見ている子供が「これなあに?」と質問したときに、わからないなりに展示パネルを見て説明するお母さんもいれば、「知らない」と言ってスルーしてしまう人も。中には、答えは教えずヒントだけ出して子供に考える時間を与えている人もいて。それを見て私は、「ああ、きっとこういう環境で育った子は将来理系に進むんだろうなあ」と思ったりしたんです。
安部さん
確かに、保護者にしてみたら、子供の疑問に一つ一つ向き合うのは大変だろうし、正しい答えを教えなくちゃいけないと思うかもしれません。でも、一緒に考えたり、共有する時間が大事だと思うんですよね。
例えば、私がワークショップを行っているときも、突然電気がつかないなどうまくいかなくなることが度々あるんです。でも、原因がわからなくて「なんでだろう?」って首をかしげていると、「こうじゃないかな?」と子供たちが意見を出して助けてくれることが多いんです。
大堀さん
今回のワークショップでも、あえて失敗してみるっていうのはありですよね?
私も大学でいろんな実験をしているんですが、スムーズにいった時よりも失敗した時にこそ、いろんな気づきや発見があるんです。
五十嵐さん
私は、幼いころ祖父が作ってくれた工作ボックスを使って、自分で自由に考えて好きなもの作ってたんです。それを見たお母さんが褒めてくれるのが、すごく嬉しくって! 与えられたものを型通りに作るのではなく、自分の自由な発想を身近な大人が喜んでくれる。そういう体験が、エンジニアとして仕事をする喜びに通じていると思いますね。
安部さん
子供は、親や大人に否定されると質問すること自体ダメなのかな、と思ってしまうことも。逆に自分の考えを認められて褒められると、もっとやってみたい、知りたいというモチベーションに繋がるんですよね。
だからこそ、子供が興味を持ったことが正解であってもなくても、そのこと自体を受け止めることが子供の可能性を広げるんじゃないかって思います。
五十嵐さん
将来、理系の道に進まないとしても、科学を学ぶことで培われる論理的思考は社会に出た時に役に立つと思うんです。だからこそ、その可能性を小さなうちにつぶしてしまうのはもったいない! 今回のワークショップでも、子供たちが失敗したり自由に発想したりすることを、みんなでサポートして寄り添ってあげたいですね。
こうしてワークショップでの子供たちとの関わり方が、5人の中で固まってきた様子。そこで、実際にワークショップで扱うサイエンストイ「ハピエンス」を企画したピープル(株)上原麻里衣さんにもお話を伺いました。
——女児向けのサイエンストイとは、すごく新しい気がするのですが、開発の経緯を教えてください。
今年から小学校で始まるプログラミング教育の必修化は親御さんの関心がとても高く、その準備として小学校に入る前から理系に触れさせてあげたいと思っている方も多いと聞きます。
実際にリサーチすると、女の子のお母さんたちの方が、「うちの子は理系を苦手にしてほしくない!」という気持ちが、男の子のお母さんたちより強いと感じました。詳しく聞いてみると、女性であるお母さん自身が苦手だったことから「女の子は理系が苦手」という意識があるようで、「今からうちの子にしてあげられることは何かないか?」と漠然と考えているようです。そんなお母さんたちも女の子たちも、楽しく新鮮な気持ちで理系に触れられて、理系に興味を持つきっかけになればという想いでこの商品シリーズを立ち上げました。
——日本でSTEM玩具はどの程度認知されているのでしょうか?
STEM教育が進んでいる海外ではSTEMおもちゃが発展していますが、日本ではまだピンとこない親御さんが多いように感じます。それに、日本ではモーターや工具を使うようなおもちゃや科学系のおもちゃは男の子向けのものというイメージが強く、女児向けのものはまだまだ少数。
「ハピエンス」は女の子が興味を持つモチーフを取り入れているのが大きな特徴で、楽しく遊んでいるうちにいつの間にか科学に触れていた、という新しい体験ができるおもちゃです。女の子にターゲットを絞ったSTEM玩具は珍しいと思うので、先駆けになりたいと思っています。
——ハピエンスが他のSTEM玩具と違うところは何でしょうか?
もちろん理系の分野を楽しく学べるというメリットもありますが、「楽しく学び表現する力」が身に付くと個人的には思います。
ハピエンスのすべてのおもちゃは、お子さんの個性を表せる面がたくさん潜んでいます。一度おもちゃで理系の原理を学んだら終わりではなく、その後も原理や考え方を利用して自分で何かを表現しながら遊ぶこともできます。
ここからは、実際にリケジョも思わず夢中になった 「ハピエンス」についてご紹介。リケジョならではの視点で各商品の魅力を伺ってきました。
鉛筆で音が鳴るなんてびっくり! 電気の仕組みが感覚的に身につきそうーー布施谷さん
ここがスゴイ!
布施谷百合香さん
日常的に使っている鉛筆を使うところがいいですね! 鉛筆は字を書くためのものと思っている子が多いので、「どうして音が出るんだろう?」と興味が沸くと思います。鉛筆だけでなく、水や食べ物など家にあるものをつなげて音が鳴るかを試していけば新しい発見にも。
大堀智博さん
小学生の頃、これと同じようなおもちゃで遊んでいました! 金属やプラスチックなど家の中のあらゆるもので試した記憶があって、今思うと、物質に興味をもったきっかけになった気がします。ドレミの音階の8音が出るところも楽しく学べるポイント。
自分で創造する「+1」のアクションが子供たちが喜ぶポイント!ーー五十嵐さん
ここがスゴイ!
五十嵐美樹さん
自分で好きに絵を描いたり、色を塗ったりといった子供たちが大喜びする“プラスワン”の要素が盛り込まれていて、小さいお子さんでも入りやすいと思います。電池を逆に入れてLEDが光らないなんてことがあると思うんですが、周りの大人が「どうして光らないのかな?」と問いかけるのもいいと思います。お部屋に飾って毎日眺められるので、「水金地火木土……」と言葉で覚えるのと違って、長期記憶として身につきそう!
プログラミングの学習プロセスや創造性を育むきっかけとして、とても良いツール!ーー安部さん
ここがスゴイ!
安部由里子さん
「やじるしカード」を使って「ロジコ」を自由に動かしたり、目的に向かって失敗もしながらひとつひとつクリアしていく過程は、プログラミングの学習プロセスと通ずるものがあると思います。自分だけの世界を作っていく創造する楽しさがあり、私もいつの間にか夢中になっていました! 誰でもプログラミングの世界の入り口に立つことができることに気づかせてくれますね。
五十嵐美樹さん
目標に向かって手順を考え、指令や動作を繰り返しトライ&エラーするというプロセスプログラミング的思考がわかりやすく実感できると思います。それをこんなに楽しく学べるのが魅力! プログラミング玩具は機器の設定が難しかったりするものも多いのですが、これは操作も簡単。誰でも、どこでも、いつでも遊べるので、理系への興味に関わらず、ぜひ手に取ってほしいです。
Rikejo STEM lab.主催
「ハピエンス体験ワークショップ」プログラムが決定!
2月15日開催のワークショップに向けていよいよ準備も大詰め。
今回のワークショップでは、「プログラミング」を学びます。小さい子にはちょっと難しそうなテーマですが、プログラミングとは何か?を理解してもらうために、メンバーがアイディアを出しあって楽しいプログラムを考えました!
子供たちがどんなふうに反応してくれるのか、Rikejo STEM Lab.も今からイベントが待ち遠しい様子。ワークショップの模様は次回ご報告します。お楽しみに!
構成・文=矢沢美香 撮影=荒井拓雄(人物)、恩田亮一(商品) ヘア&メイク=sai