女の子たちがもっと科学に触れる機会を!

Rikejo STEM Lab.のメンバー

左から/布施谷百合香さん、大堀智博さん、五十嵐美樹さん 、安部由里子さん 、上原麻里衣さん

女の子と科学をつなぐサイエンストイ「ハピエンス」とRikejoがタッグを組み、未来のリケジョとなる子供たちを応援するプロジェクトを立ち上げました!

理系分野を目指す女子はまだまだ少数派ですが、来年度から小学校でプログラミング教育が必修化。将来的にもますます理系女子の活躍が期待されています。
子供の頃から科学に触れる機会があれば、リケジョに憧れる女の子がもっと増えるはず!

そんな思いに賛同した先輩リケジョとSTEM教育のプロたちがプロジェクトに参加。「Rikejo STEM Lab.」として、科学の楽しさや最新のサイエンストイの魅力を発信していくほか、子供たちに向けたサイエンスイベントもプロデュース。「科学って、おもしろい!」そんな気づきやきっかけづくりをバックアップしていきます。

Rikejoでも、その活動の様子をつぶさにリポート!
まずは、Rikejo STEM Lab.のメンバー5名をご紹介します。
科学に目覚めたきっかけ、女の子が科学に興味を持つためにはどうしたらいいか? など、それぞれの立場から大人も参考になるお話を伺ってきました!

科学のお姉さん 五十嵐美樹さん

「環境によって子供たちの選択肢を狭めないようにするためには」

トップバッターは、東京大学大学院学際情報学府に通いながら、 “科学のお姉さん”として活動する五十嵐美樹さん。全国各地で子ども向けの科学実験教室やサイエンスショーを開催するほか、科学系のテレビ番組にも多数出演しています。上智大学理工学部卒業後は企業でエンジニア職も経験したといいます。

——エンジニアから一転、なぜ、今の活動を始めようと思ったのでしょう?

私が専攻した工学分野は女性がとても少なかったんです。それが普通なのかな、と思っていたのですが、でも、世界を見渡してみると全然そうじゃなかった。
特に工学系に進む女性の割合は、日本はOECD諸国の中でもワースト1位と言われているんです。

その理由のひとつとして、もしかしたら日本では女子が子供の頃から理工系に親しむ機会がまだまだ少ないのではないかと思ったんです。

例えば、 私は弟がいたこともあり、幼い頃から電池やモーターを使ったおもちゃでよく遊んでいたのですが、大人になってから子供のおもちゃ売り場を見てみると、”女子玩具”と書いてある棚には理工系の要素を含むおもちゃがほとんどなく、とても驚いたことを覚えています。

このように私たち大人が作る環境によって子供たちの選択肢が狭まらないようにしていきたいと思い、商業施設やおもちゃ屋さん、お祭りなど全国各地のとにかく人目に付く多様な場所でサイエンスショーや科学実験教室を始めました。

——活動を通して大人に伝えたいことは?

私自身は虹の実験に感動したことで科学が大好きになり、現在科学と関わる仕事をしていますが、将来、もし理系に進まなくても、科学を学ぶことで得られる経験や論理的思考は、この先の時代を生きる子供たちにとって必要不可欠になってくると考えています。

何か特別な教育プログラムを経験しないと子どもは科学に関心を持たないのでは?という質問もよく親御さんからいただくのですが、例えば「石鹸ってなんで泡が出るんだろう?」とか「ヘアゴムってなんで飛ぶのかな?」といったように、家庭で生まれる会話を深堀りしていくだけでも科学につながっていた、なんていうことはよくあると思います。

何がきっかけになるかはわかりませんが、子供が興味を持つ小さなきっかけは身近にたくさんあるので、まずは見たり触れたりする環境を私含む大人が作っていくことはとても大切だと思います。

得意のダンスを取り入れたサイエンスショーは子供たちに大人気! 科学実験をおもしろおかしく解説する「ミキラボ」もYouTubeで公開。

先輩リケジョ 布施谷百合香さん

「子供の頃から科学に触れ合ういろいろな体験をさせてくれた親に感謝しています」

布施谷百合香さんは、お茶の水女子大学3年生。理学部生物学科で、子供の頃から大好きだったという生き物を研究しています。理系女子大生コミュニティ凛の10期代表としても活動。Rikejoでは女子中高生への進路支援や女子高生向けイベントの企画・運営なども行っています。

——子供の頃に、科学と触れ合う体験をたくさんしたそうですね。

田舎育ちで自然の中で遊ぶことが多かったのですが、親が科学実験教室や自然を体験するワークショップとかによく連れていってくれたんです。
そのときは半ば強制的でしたが(笑)、でも、みんなで採ったしじみでお味噌汁を作って楽しかったなとか、そのときの光景や生き物の映像は今でもしっかり記憶に残っています。そのおかげで好きなことを見つけることができたので、学べる環境を与えてくれた親にとても感謝しています。

——理系女子大生コミュニティ凛ではどんな活動を?

理系で学んだ経験を強みに様々な分野で活躍されている女性の方々を取材するほか、イベントの企画・運営、特別講師を招いた勉強会やセミナーなどを行なっていて、その活動をSNSやフリーペーパーで発信しています。
凛の活動やコンセプトに賛同いただいた企業や団体からの協力依頼も多く、フリーペーパーを読んでくださった方からは、「将来の職業や生き方を考えるきっかけになった!」との声も。いまや学生だけでなく理系女子のキャリアや科学技術に興味のある方々と交流し、活動の幅も広がってきました。

発足して11年になりますが、創設当初よりも理系女子は増えていますし、閉鎖的な環境や世間が思い描く理系女子へのイメージも変わってきました。
今の子供たちが大人になる頃には、理系女子の活躍の場がさらに広がるのではないかと感じています。
特にこれからの時代は、ますます進化するコンピューターやAIを人間が「どう使いこなすか」がとても重要になってくると思います。そのためにも子供の頃から科学に触れ、論理的思考や科学リテラシーを身につけてほしいと思います!

企業や団体からのオファーで科学教室やイベントにも参加。今年度はソニー主催の女子中高生向けのイベントを企画・運営。

先輩リケジョ 大堀智博さん

「女子が理系に進むのは“当たり前” そういう空気を社会全体で作っていくことも必要」

布施谷さんと同じお茶の水女子大学理学部生物学科3年生の大堀智博さん。理系女子大生コミュニティ凛では、取材の交渉やイベントの調整、SNSなどを担当。Rikejoのインスタグラムでも、理系女子大生のランチや実験の様子などリアルな日常の一面を発信しています。

——Rikejo Q&Aで、女子中高生に進路支援のアドバイスをされているそうですが、どんな悩みや相談が多いのでしょう?

将来の仕事や夢を叶えるためにどのような大学を選べばよいか、科目や文理選択に迷っている、というような質問が多いです。
私の発言が質問者の大事な進路選択に関わる場合もあるので、自分一人だけの偏った視点からの意見にならないように、なるべく周りの人の体験や、インターネットなどで調べた裏付けされた情報を提供するようにしています。

また、理系に憧れているけれど数学が苦手、文系の方が大学生活を楽しめるのでは、といった理系に対する漠然とした不安やマイナスイメージを持っている人もいます。
私も高校で理系に進むことを決めたときは数学が大の苦手だったので、自分の経験や理系の大学生活の様子を伝えたりして、質問者の方が理系に対して前向きになれるように心がけています。
そういった理系に対するイメージを変えるためにも、理系女子大生コミュニティ凛やRikejo STEM Lab.の活動を通して、幅広い分野で活躍する理系出身女性が多くいることを伝えていきたいです。

——Rikejo STEM Lab.主催のワークショップでは、電気で音が鳴るおもちゃのデモンストレーションも担当されるそうですね。

参加者が未就学児なので、やさしい言葉で解説したり、電気が伝わっていく様子をイラストで表現したり、小さい子供でも理解できるような工夫を考えています。
日常生活を支えている電気や、電気を通す物質についてまずは興味を持ってもらい、この先、学校でより詳しく学習したときに、この経験を “答え合わせ”をする材料にしてほしいと思います。
また、親御さんも楽しみながら体験すると、子供たちの興味や学習が加速すると思うので、メンバーでワークショップを盛り上げたいと思っています!

細胞の物質や情報のやりとりに興味があるという大堀さん。将来は専門知識を活かした開発・研究職を目指しているそう。

CANVAS 安部由里子さん

「間違えても失敗しても否定しない。褒めること=肯定することが子供の興味の幅を広げる第一歩」

子供たちの創造力・表現力をテーマにしたイベントなどを展開する「CANVAS」で、ワークショップコーディネーター・講師を務める安部由里子さん。プログラミングやSTEM教育のワークショップも手がけているプロの立場から、科学に触れることの大切さや環境作りのアドバイスを伺いました。

——普段はどんなワークショップを手がけているのでしょうか?

STEM関連では、身の回りの電気を通すもの・通さないものを見つけて探検したり、カメラに顕微鏡を取り付けてミクロな世界をのぞいてみたり、モーターの振動の実験をしながらみんなで紙相撲を行ったりするワークショップなどを実施してきました。また、自分の描いた絵に命令を与えて動かすといったプログラミング関連のワークショップも多いですね。
STEMやプログラミングのワークショップで大事なのは、子供が自発的に試行錯誤できるような声掛けと、興味関心を引き出すこと。

間違えたり、失敗したりしても「どうしたらいいかな?」と問いかけ、一緒に考えながら、できたときは喜びを共感する。子供の視点に寄り添いながら見守ることを心がけています。
また、科学は日常生活の中にあふれているということを知るきっかけとして、例えば電気ならスイッチ、モーターなら携帯電話のバイブレーション機能、といった身の回りにあるものに置き換えて伝えるようにしています。

——子供が科学に興味を持つために、大人は何をすればいいでしょう?

子供たちが自分で考え、チャレンジできる環境を大人が整えてあげることが大切だと思います。
例えば本にしても、絵本が好き、図鑑が好きなど好みはひとりひとり異なるため、子供が自ら「読んでみたい」と思えるように、選択肢を増やして選べるようにする。そういった環境が子供の自主性を育み、興味の幅を広げるきっかけとなり、新たなチャレンジにもつながるのではないでしょうか。

もし、科学に親しめるような環境を家の中で作るのが難しかったら、外に求めてもいいと思います。公園で遊んだり、街の中を歩いたりするだけでも刺激になりますし、子供の柔軟な発想を育てる場としてワークショップも気軽に活用してもらえたらと思います。
Rikejo STEM Lab.が主催するワークショップでは、初めてプログラミングを体験する小さなお子さんも楽しめるような、趣向を凝らしたプログラムを企画しています。実際に理系を専門に学んでいる学生さんたちとも触れ合えるので、楽しみにしていただきたいですね。

キッズクリエイティブ研究所」でメイン講師を務めるほか、「STEAM KIDS展」「ほうかごクリエイティブプロジェクト」にてSTEM教育の取り組みも。

ピープル 上原麻里衣さん

「楽しく学び、表現力を身につける。おもちゃの力で女の子をハッピーにしたい!」

最後は、来春発売される新製品のガールズサイエンストイ「ハピエンス」を企画した、ピープル株式会社 女児ホビー・ままごと課 プロジェクトマネージャーの上原麻里衣さん。遊びの大切さやハピエンスについてのお話を伺いました。

——おもちゃ開発には、ご自身の子供の頃の経験が役立っていると伺いました。

私は小学4年生からアメリカで3年間くらい生活をしていたのですが、そのとき通っていた学校の授業がとてもユニークでした。
理科の授業では、粘土や針金や絵の具を使って自分のオリジナルの分子模型を作ってプレゼンしたり、ギリシャの歴史を学ぶ授業では、先生とクラスのみんなで古代ギリシャ人のコスプレをして料理を作ってパーティをしたり。遊びを通して学んだり、自分を表現したりする機会が多かったんです。

そのときの「楽しく学び、表現する力を身につける」という経験は、今の仕事であるおもちゃの開発にも活かされていると実感しています。
例えば、昨年企画した女児玩具初のDIYトイ「ねじハピ」もそのひとつ。
これまではドライバーなどの工具を使う科学系の玩具は男の子のものとされてきたので、正直、女の子やお母さんたちに受け入れられるか不安もありました。
でも、発売してみると驚いたことに多くの女の子が「ドライバーでねじ留めたい!」と夢中になってくれて、お母様たちの反応もすごくよかったんです。
この商品をきっかけに、今までの女児玩具のジャンルにとらわれない、女の子の可能性を広げる商品を開発していきたい! と思うようになり、それがハピエンスの開発にもつながっています。

——ハピエンスとはどんなおもちゃなのでしょう?

ハピエンスとは、ハッピーとサイエンスを掛け合わせたネーミング。女の子がハッピーになれる楽しい遊びを通して科学が学べる、未就学児向けのSTEM玩具です。
ハピエンスのおもちゃは、お子さんの個性を表現できる面がたくさんあり、まさに「楽しく学び、表現する力を身につける」を体現したようなおもちゃだと思っています。
おもちゃで1回遊んだらそれで終わりなのではなく、その原理や考え方を応用して自分で新たなものを表現することができるんです。

「自分は苦手だけど子供は理系に触れさせておきたい!」という親御さんはもちろん、「見た目が可愛くて楽しそう!」という方も気軽にこのハピエンスで遊んでみてほしいですね。おもちゃで楽しく遊んだ結果、学びにつながっていたという新しい体験で、女の子たちの視野を広げてあげたいと思っています。

今回、Rikejo STEM Lab.のメンバーには、現役理系大学生の方や体験を通じて楽しさを伝えるプロの方が集まってくださいました。このような機会が無いとなかなか関わることがない方たちなので、私も玩具開発のプロとして協力しながら、皆さんの意見を取り入れてハピエンスをよりパワーアップしていきたいと思っています!

「ハピエンスが日本のSTEM玩具の先駆けになってほしい!」と上原さん。Rikejo STEM Lab.のワークショップに向けた準備も着々と進行中。

Rikejo STEM Lab.主催のイベント情報

親子で科学を体感する
「ハピエンス体験ワークショップ」
2020年2月15日開催決定!

Rikejo STEM Lab.が考案したオリジナルの「人間プログラミング」ゲームで、科学の楽しさを体感! 簡単な課題をクリアすることで「論理的思考力」とは何か?を親子で一緒に学びます。
ハピエンスのおもちゃを使ったデモンストレーションでは、現役理系女子大生が電気のヒミツをわかりやすく解説。五十嵐美樹さんの踊るサイエンスショーも必見の盛りだくさんの内容です。
現在、開催に向けてプログラムの準備が大詰め! どんなワークショップになるのか、 その様子を引き続き取材してご報告します。乞うご期待!

ワークショップ詳細はこちら→https://gendai.ismedia.jp/list/special/stemlab

構成・文=矢沢美香 撮影=荒井拓雄(人物)、恩田亮一(商品) ヘア&メイク=sai

提供/ピープル株式会社
https://www.people-kk.co.jp