理系のための就活講座第3弾。今回は応募書類作成のコツをお伝えします。
面接に呼ばれるかどうかは書類の出来栄えにかかっています。気合を入れて作りましょう!
企業が応募書類に求めている情報とは
応募書類は通常、履歴書・職務経歴書、(必要に応じて研究概要)の3つ。新卒の学生であれば、職務経歴書の代わりにES(エントリーシート:企業ごとに作成された応募フォーム)です。採用側の企業がどういう観点で書類を見るかというと、ズバリ「自社のニーズに合う人なのかどうか」の一言に尽きます。
では「自社のニーズに合うかどうか」は、どこで判断しているのでしょうか?
主に次の3つです。
(学生であれば学位に応じた基礎的な科学の知識と研究姿勢)
②志望動機
(自己分析・企業研究が浅いと、説得力のあるものが書けない)
③文面や体裁から伝わる人柄
(趣味や学生時代の話から誤字脱字まで。神は細部に宿る)
この3つを、応募企業に合わせて的確に表現していきましょう。「応募企業のニーズなんてわからない」と思うかもしれません。そうなのです。正確かつ具体的なニーズはもちろんわかりません。
しかし、企業のHPやニュース、その他の活動などで打ち出しているメッセージから掴めることもありますし、業界全体を取り巻く環境や、その企業の立ち位置などを、色々なフレームワーク(3CやSWOTなど)を活用して、自分なりに仮説を立てることもできます(企業研究のやり方については後日改めてお伝えする予定です)。
また新卒のみなさん。社会人として伸びる人材かどうかの判断材料として企業が重視している要素はある程度共通しています(社会人基礎力に挙がっているような、行動力やチームワーク力、課題発見力などですね)。応募しようとしている企業が重視している力、志望している職種に一番求められている力は何なのか、自分なりに想像力を働かせて考えたり、実際にその仕事についている人の話を聞いたり調べたりして理解を深めましょう。
企業のニーズについて自分なりの仮説を立てたら、自己分析で整理した自分の強みのどれとマッチするかを考え、それを中心に記述していきます。うまく書けない場合は、自分と合わないのか、そうでなければ、自己分析および応募企業(または志望職種)の理解が浅い証拠です。何度でも自己分析と企業研究(職種研究)に戻りましょう。その繰り返しの作業で説得力のある応募書類が完成します。
ひとつずつ、解説していきます。
①スキル(能力)
新卒は「研究内容」、キャリア採用は「職務経歴」の記載がスキルの記述の中心になります(卒後3年以内の第二新卒採用の方は、職歴と学校での研究内容と両方記載します)。能力をアピールすることが重要ですが、応募企業が関心のありそうなスキルに絞りましょう。たくさん書いてあっても読むのが嫌になります。相手の立場に立てない人(=コミュニケーション能力に疑問)と判断されてしまうかもしれません。
・専門用語や略語が羅列されている
大学での研究やこれまでの経歴を説明する欄に、専門用語が多用されているものを、本当によく見かけます。学会発表ならお互い同じ分野の研究をしている者同士なので特に問題はなかったでしょう。ですが応募書類の読み手は、文系の人事担当者かもしれません。誰が読んでもわかる言葉を選びましょう。
・研究内容の記述が細かすぎる
専門外の人に自分の研究を伝えるコツは、細かい枝葉末節を思い切って省き、「研究の意義や全体像」を中心に語ることです。人事担当者が理系の場合でも、専門が異なれば、難易度の高い実験手法を記載してみても正確に伝わらない可能性が高いです。
興味を持ってもらうためには、「そのテーマはどういう目的で設定されたのか」や「その研究の成果は世の中や生活をどう変えるのか」「その分野において、どんな位置づけのテーマなのか」という切り口が効果的です。理学分野は実社会での応用成果を書きにくいので、「高校生に面白そうと思ってもらえるにはどう伝えたらいいか?」という観点で記述していくと伝わりやすくなります。
・資格がとにかくたくさん書いてある
持っている資格は全部書きたくなりますが、履歴書の資格欄に収まらないくらいたくさんある場合は、取捨選択を。手当たり次第に資格をとっているように映ると、計画性や自信がないという印象になりかねません。応募している企業や職種で活かせそうなものを、優先して書きましょう。
・守秘義務に反しそうな内容が書いてある
研究室や前職での実績を具体的にわかりやすく記載しようとするあまり、取引企業名やまだ開発中のプロジェクトの内容まで書かれているのは、守秘義務の意識が薄いとみなされます。具体的な実績を記載するときは、守秘義務に違反していないか念には念を入れて確認を。一般的に、WEBや出版物などで世間に公開しているもの以外は「秘密」として判断して問題ありません。
・職歴と職務内容がすべて細かく書いてある(キャリア採用の場合)
複数の会社の経歴をあたかも1社のようにまとめたり、省略することはNGですが、5社以上ある場合はメリハリをつけましょう。応募する企業や職種に関係のない技能のアピールは不要。読み手が求めている情報は、採用予定の職種に対してスキルや適性があるかどうかです。
*キャリア採用の場合です。新卒は、ジョブローテーションを通じて様々な能力開発を行うため、どこでもどんな仕事でもチャレンジして吸収できそうな人材が好まれます。
②志望動機
あなたが研究室に入る新入生の面接を任されたとしたら、と想像してみてください。
頭が良くて、実験の説明も一回で分かってくれそうな優秀な人。だけどいまひとつ研究対象への愛を感じられず、とりあえず来たという印象の人と、手技は不慣れでだいぶ練習が必要そうだけど、熱意があり、やりたい理由に思わず共感してしまった人とだと、どちらの人と一緒に研究をしたいと思いますか? 後者だと思う人は多いのではないでしょうか?
企業の採用担当者も同じです。
かといって、熱意だけでは通りません。
熱意を論理に乗せて相手を説得することが大切です。
そのためには「自己分析」と「企業研究」がきちんとできていることが大前提になります。
自己分析では、自分の価値観・強みを確認します。企業研究では、志望する企業のニーズ(新入社員に何を求めているか)の仮説を立てます。この二つを統合し、自分のどの側面がその企業(あるいは職種)にマッチするかを考え、それが伝わるように書きます。
具体的なポイントは下記の通りです。
共感ポイントに対する自分の価値観や想いを記載する。
2. その企業で自分のスキルが生かせそうな職種や事業分野を探す
これまでの人生経験や培ってきたスキルや強みがどのように発揮できるのか(貢献できるのか)自分なりに論理展開していく。
自分がどんなことを大切にしているのかは、第1回で行った価値観の自己分析で明確にできます。
応募書類を書く際は、自分の大切にしている価値が「応募している職種でどう生かせそうか」という視点で考えてみてください。例えば、手順通りに正確に繰り返し行うことが求められる品質管理のような職種の応募書類に、「改革」や「臨機応変」というような価値観のアピールは的外れです(この場合、そもそも応募職種とご本人の指向にミスマッチがあります)。
・自分の都合ばかり書いてある
「御社でいままでの経験を活かしたい」「御社で自分を成長させたい」といった文言は、応募するこちら側の都合です。自分を採用したらどんなメリットがあるのか、会社にどんな貢献ができるのか、採用する企業が知りたいことを書きましょう。「成長」は前向きさを伝えられる良いキーワードなので使ってOKですが、必ず成長した後の姿(=将来のビジョン =会社にとってどんな戦力になろうとしているのか)を書くようにしましょう。
・自分の「好き」「やりたい」に固執している
自分のやってきた研究内容や興味のある分野のことばかり熱く語ってしまうと「それ以外のことはやりたくないのかな?」と思われかねません。これは面接でも同じで、もっとも注意が必要なポイントです。これまでの経歴や研究してきたことは、もちろんあなたの強み。でもこれは就活だということを忘れてはなりません。その強みを企業でどう活かすのか? 特定の職種や研究テーマにこだわらず、企業全体の発展に活かせるか? 応募先企業の目線で考えてみましょう。
・条件面(例えば「地元で働きたい」等)の理由ばかり
地元で働きたいというのも立派な志望動機ですが、それだけだと「隣の会社でもいいのでは?」と思われてしまうかもしれません。「女性が活躍しているから」や「残業が少ないから」など、企業の本業以外の理由を挙げる方が増えていますが、これを前面に出してしまうと、仕事内容や事業内容に対する思い入れが無い人、との誤解を招きがちです。条件面も仕事選びではとても大切ですが、企業へ伝える際は控えめにしましょう。
また、複数にわたる設問の整合性(一貫性)も大切です。
グローバルな研究をしたいという志望動機の場合、「学生時代に力を入れたこと」に「語学の学習や、外国人の友人との交流の機会を積極的に持った結果、同じ分野の海外の研究動向については誰よりも詳しくなった!」などの事例が記載されていると、説得力が増します。逆に、そういう学生時代を過ごしていない人が「グローバルな研究をしたい」と言っても本気度はあまり感じられません。別の志望動機を練りましょう。
③文面や体裁から伝わる人柄
ESの定番は、「学生時代に力を入れたこと」「趣味」「好きな言葉」など。これらの設問は、あなたがどんな人かを表現することが期待されています。
特に「学生時代に力を入れたこと」は、理系の学生は文系と違ってバイトやサークル、ボランティアやビジネスコンテストなど研究以外の活動をしている時間が少ないことが普通ですが、実は、派手な経歴(受賞歴など)や目立つ経験(留学・学生団体立ち上げ)が無くてもES通過は十分に可能です。
では仮に、学生時代に力を入れたことを「研究」とする場合、どうすれば人柄を伝えられるでしょうか?
出典:リクルートキャリア株式会社 就職白書2018
研究内容を詳しく書いても「人柄」は伝わりません。
人柄を伝えるものは、「想い」と「行動」です。
研究中に遭遇した困難なこと、人間関係、研究室運営上の課題など、研究にまつわる不便・不具合、予期せぬ出来事、に対して自分なりにどう原因分析したか、更に、それを踏まえてどのような行動を取ったか、なぜその行動を取ることがベストだと判断したのか、そんなことが書けると、あなたの人柄が伝わります。上司の指示に従いコツコツと正確に実験を進めてきた人なのか、色々な関係者に働きかけて研究環境を良くすることに力を発揮したのか……(組織にはどちらのタイプの人も必要です)。学生時代の行動とその背後にある想いや判断軸を知ることで、入社後、あなたがどんな風に活躍してくれるのかが透けて見えるのです。そしてそれこそが、採用担当者が知りたいと思っていることなのです。
趣味についても、「どうしてその趣味を続けているのか、その趣味の魅力は何か?」を考えると、自分が大切にしている価値が明確になり、面接で聞かれたときに採用担当者に分かりやすくあなたの人柄を伝えることができます。
応募しようとしている職種と共通の要素がある趣味なら志望動機に説得力が増しますし、全く逆の要素の趣味なら「仕事で疲れても、休日にうまくリフレッシュして元気に働こうと思います!」というアピールができます(ストレスの対処法を持っていることも企業側の安心材料になります)。また、華道や書道など「道」がつくようなお稽古や、オーケストラやサッカーなどチームワークが大切な趣味なら、そこから学んだことは仕事でも活かせますね。是非アピールすべきです。
つまり、どんな質問も、すべて自分の人柄を伝えることである(=自己PRの材料である)という意識で記述していくことが大切です。冒頭の社会人基礎力を参照しながら考えると、やりやすいと思います。
以上、企業が会ってみたいと思う応募書類を、内容面から考えてきました。
① 科学の基礎ができている
② ポテンシャルを感じる(成長が期待できる)
③ 仕事に対する意欲(志望動機)が明確 (根拠となる行動・エピソードがある)
最後に重要なポイントをお伝えします。
無事に書類選考を通過すると、次のステップは面接になります。
面接は、応募書類に書かれた内容をもっと詳しく確認し、相互理解を深める場として設定されています。
つまり応募書類は、書類選考に通過すれば終わり、ではなく、最終面接とそのあとの最終選考に至るまで、ずっとあなたの一部として扱われるものです。嘘偽りのない自分を誠実に書きましょう。
応募書類作成の注意<体裁編>
応募書類は見た目が読みやすいということも大切です。
汚い字でぎっしりと書いてあるものは、読みたいとは思われません。
丁寧な文字で相手に読みやすい文字の大きさを心掛けましょう。
■読みやすく情報をまとめる
見出しは本文よりも大きくする、太字にする、ラインを引くなど、視覚的に見やすくしますが、凝ったデザインやレイアウトは不要です。
■文章は短く簡潔に!
結論から先に書くようにします。ビジネスにおける文章は、「結論→理由の説明」が基本です。
特にESは文字数制限があるので、何度も推敲して、無駄のない文章を目指しましょう。
■ポイントは絞る
たくさんアピールしたくても、その企業にとって一番響くものに絞るようにしましょう。取捨選択のセンスもビジネスセンスのひとつです。
■必要に応じて、図表・イラストも活用する
理系の方は特に得意だと思います。うまく活用できれば、学生時代にきちんと勉強した人、と伝わります。
・明らかに使いまわし
コピペをしていて、ほかの応募企業名のままのもの、意外と多いです。
・細かいミスが多数ある
捺印忘れや修正テープでの修正、誤字・脱字……。
採用側からすると、本気で応募してもらえていない印象を受けます。
・凝りすぎたレイアウト
クリエイティブな職種以外は避けたほうが無難です。
・長いもしくは省略しすぎ
職務経歴書はA4用紙2ページが適当な量です。職歴が少なく、1ページに満たない場合は、志望動機を厚めに書くなど工夫しましょう。
応募書類は、企業へのアプローチの第一歩。沢山のことに配慮が必要で、応募企業ごとに作成するのはとても労力がかかることがわかると思います。是非締め切りに余裕をもって作成し、大学のキャリアセンターやエージェント(就職支援会社)に見せて、添削やアドバイスを受けることを強くオススメします。
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