こんにちは! Rikejo事務局です。
3月17日に開かれる「ミライリケジョ ものづくりカフェ 2019」では、ロボットを使ったものづくりワークショップを開催します。
ワークショップの後半では、「水」を生かした街のアイデアを考えながら、ロボットが疾走するコースを作成!

この直前SP連載では、番外編として、イベントに参加する人も、今回は参加できなかった人も、一緒に私たちが「水」を使える理由を考えてみたいと思います。

第1回はこちら→<第1回 考えてみよう! 私たちが「水」を使える理由>https://www.rikejo.jp/article/24377
第2回はこちら→<第2回 「水道」の中では何が起こっているの?>https://www.rikejo.jp/article/24479

※このスペシャル講座は、ワークショップの内容を「深読み」するアドバンストコースです。記事の内容とイベント本編は直接的には関係ありません。

水を届ける「圧力」って、どうやって作っているの?

みなさんが普段、何気なく使っている「水」が、どうやって私たちの元に届くのかを「深読み」してきたこの連載も、いよいよ最終回。

連載の第1回では、「川が上流から流れてくるのは、水が、水源から下流までの高低差によって位置エネルギーを持つから」ということを考えました。
第2回はちょっとハードだったけれど、「水道管の中みたいな水の流れの中で、エネルギーの保存則が成立する」というベルヌーイの定理をご紹介しました。

第1回、第2回で考えたことを組み合わせると、海抜わずか3mの金町浄水場から、ミライリケジョ2019の会場である文京区音羽2丁目の講談社、標高は12.7mの場所まで水を送るには、高い圧力が必要になることがわかりましたね。

では、その圧力は、いったいどうやって作っているのでしょう?

今回は、ハードな数式はおいておいて、Rikejo事務局で、こんな「ものづくり」実験をしてみましたよ!

今回は工作です!

まず作ったのは、ペットボトルを切って胴の部分を縮めた容器の中に、回転翼を入れたもの。

スクリューのようなものではなく、円盤の上に放射状に羽が並んだ羽根車です。今回の実験では、中心から外側へと水を誘導して、遠心力を発生させることが目的なので、これでも十分!

パイプを芯にして回転するように設置し、上部におもちゃのボートのための高速回転モーターを取り付けました。

そして、ペットボトルの横川にも穴を開けてパイプをつなぎ、ここから分液ロートにチューブをつなぎました。

こんな装置で、いったい何をしようというのでしょうか?

実は、やってみたのは、こんな実験です。

回転翼が生み出した遠心力によって、外へ外へと押しやられる水には圧力がかかり、それが水圧を生んで、チューブの中の水面が押し上げられました。

今は簡易的にペットボトルは密閉されていない状態で実験を行いましたが、改良を加えて容器を密閉できれば、水は行き場を失って、さらに圧力が高まるでしょう。

手回し発電機で動かしたのですが、腕が疲れるくらい頑張っても、チューブの中の水は1〜2cmしか上がってくれませんでした…汗。

みんなの生活を支える「ポンプ」

「水を送り出す装置」「届ける装置」と言われたら、多くの人が思い出すのが「ポンプ」だと思います。

でも、ポンプにも色々な種類があるって、知っていましたか?

たとえば、こんなレトロなポンプ。

こうした手押しポンプは、ポンプが働く仕組みで分類したときには「容積ポンプ」と呼ばれるものの仲間になります。

手押しポンプを動かすと、その中では、こんなことが起きています。


Wikicommonsより。By Hand_pump-en.svg: Manco Capacderivative work: MichaelFrey 2018-05-09 - Hand_pump-en.svg, CC 表示-継承 3.0, Link

片側にしか開かない間仕切りを利用して、ピストンの往復で生じる容積の変化を使い、水を吸い上げているんですね。

間仕切りがおりて、容積が小さくなるときには、上の間仕切りが開いて水を逃し、逆に間仕切りが引き上げられるときには、底の部分が開いて、井戸の水が容積が大きくなるに連れて吸い上げられています。

一方で、こうした容積の変化を利用するのではない仕組みのポンプを、「非容積ポンプ」と呼びます。

先ほどの工作で作ってみた、回転する羽根車を使ったポンプも、容器の容積の変化を利用して水圧を生み出していたわけではありません。

実験のように、遠心力を利用したポンプは、その中の「遠心ポンプ」とされるものです。

非容積ポンプは、遠心ポンプのように、何らかの形で回転運動を利用して水を送り出す仕組みになっているものが多いようです。

そして「水の問題」は「エネルギーの問題」にも

産業革命以来、人類は、石炭や石油を燃やすことで得られる大きなエネルギーを、「回転する力」に変えて、豊かな社会を作ってきました。

鉄道、自動車、飛行機、自動紡績機……。電気もまた、電磁石を回転させることによって発電所で生み出されています。

私たちの住む街に、水を行き届かせているポンプも、それが力強く働くのは、何らかの形でエネルギーを利用しているからですよね。

ミライリケジョ2019のワークショップのコンセプトである「水を活かす街づくり」は、もっと深く考えれば、水だけでなく水を送るエネルギーについても、深く考える、良いチャンスです。

実際、水の問題は、エネルギーの問題とも、密接に結びついています。

国連は、2014年に発表した「世界水発展報告書」のサブタイトルを、「水とエネルギー」と銘打っています(国土交通省による日本語翻訳版はこちら→http://www.mlit.go.jp/common/001044451.pdf

それによると、世界では水不足で困っている多くの人もいる一方で、世界の取水量のなんと15%、5830億㎥が、「発電所などエネルギープラントでの冷却水として消費されている」という、驚きの事実が指摘されています。

発電所では、エネルギーを生み出すために石炭や天然ガスを燃やしたり、核燃料を臨界に達させたりして、高い熱を放出させます。それを冷やすために、水が必要になっているのです。

水を自由に使える生活を、みんなができるようになるために、エネルギーの消費が増える。
でも、エネルギーの消費がどんどんのびると、逆にエネルギーを生み出すために水が使われるようになる。

水の問題とエネルギーの問題は、つながっているところがあるんですね!

一方で、第1回でも計算してみたように、標高の高い場所にあるダムの水が、低い場所に流れていく、その高低差の間だけでも、何万世帯もの消費電力をまかなえる位置エネルギーが解放されていました。

自然の中で、水は水源地から、川を下り、やがて海に出ます。その過程で蒸発した水蒸気は、やがて雲になり、その中には再び、標高の高い場所に雨としておりてきて、ダムや湖にたまっていくものもあります。
自然のサイクルの中で水が持つことになるエネルギーをうまく使おうとするのが、水力発電ですよね。

便利さや豊かさと、限りある資源。困っている人と、豊富に水を持っている人の資源の配分。
そして、貴重な水を、最後まで上手に使い切る、人間の知恵。

水を考えることは、人間社会のいろいろなテーマにつながる、奥深いものなんですね。
ミライリケジョ2019でも、ものづくりを楽しみながら、少しでも水についてご一緒に考えられればと思っています。

ミライリケジョを協賛してくださっている、荏原製作所のウェブサイトでも、ポンプの原理をわかりやすく解説している動画が公開されているから、ぜひチェックしてみてね!
https://www.ebara.co.jp/about/corporate/news_media/multimedia/index.html#anc1227451

ミライリケジョ2019に参加してくださる人も、参加できなかった人も、ときには私たちの生活を支える「すごい技術」に目を向けながら、リケジョライフを楽しんでいきましょう!