料理や食事に関する素朴な疑問。科学的な観点からその答えを探るべく、「リケラボ」編集部が管理栄養士の先生に聞いてみる新企画です!
今回の疑問は「食べ合わせ」について。
昔からの言い伝えで「食べ合わせが悪い」とされる食べ物について、科学的な根拠はあるのでしょうか……?
今回ピックアップしたのは以下の3つ。
・鰻(うなぎ)と梅干し
・天ぷらとスイカ
・蟹と柿
お答えいただいたのは棚橋伸子先生です。
鰻(うなぎ)と梅干し
──元気が出そうな鰻と、すっぱい梅干し。特に暑い季節につい食べたくなる2つの食べ物ですが、「悪い食べ合わせ」の代表格でもあります。
実際のところ、本当に一緒に食べないほうがいいのでしょうか?
「鰻と梅干し」の組み合わせはタブーと言われていますが、実は、相性は悪くありません。
──おぉ! いきなり意外なお答えが!
鰻には良質な脂質である不飽和脂肪酸が豊富に含まれていますので、食べた時にも、鰻独特の脂っぽさを感じますよね。
対して梅干しには強い酸味がありますが、その酸味には、食欲促進や消化を助けてくれる働きがあります。
鰻のような脂っぽいものを食べた時に、酸味のあるものを食べると口の中がさっぱりします。口直しにもなるし、梅干しの酸味は消化促進にも役立ちます。
──鰻の脂の消化を、梅干しが助けてくれるんですね! いいコンビのようなのに、どうして悪い食べ合わせと言われるようになってしまったのでしょう……?
脂っぽいもの、酸味の強いものは共に胃腸に負担がかかります。そのため、一緒に食べると良くないという考え方があるのでしょう。
特に夏場は、冷たいものを摂取する機会も増え、胃腸は弱り気味。胃腸が弱っている時には「鰻と梅干し」は、たしかにあまりおすすめできない組み合わせかもしれません。
また、梅干しの酸味は食欲促進の作用がある事から、高級な鰻を食べ過ぎてしまわないように! という意味もあるようです。
いずれにしても、食べ過ぎは、消化不良を起こし、お腹を壊す原因になりますので腹八分目を心掛けましょう!
──食べ合わせ以前に、なにごとも適量が肝心ということですね……。
天ぷらとスイカ
──こちらも有名な組み合わせ。たしかに油分が多いものと水分が多いものとで相反する感じもしますが、果たして実際の相性はどうなのでしょうか……?
天ぷらは、調理過程で油を使用し、脂質を多く含むため、消化に時間がかかる食べ物です。
西瓜(スイカ)は約90%が水分で、体を冷やす作用がある果物です。
体を冷やすということは、当然胃腸も冷やしてしまうわけですが、冷えた胃腸は働きが悪くなってしまいます。
また、多量のスイカを一度に摂取すれば、消化に関係する胃液を薄めてしまう恐れもあります。
消化に負担がかかる食べ物と、消化機能を低下させてしまう恐れがある食べ物の組み合わせなので、タブーとされてきたのかもしれません。
──なるほど、どうやらまるっきり迷信というわけではなさそうですね!
ただ、どちらも食べ過ぎなければ問題ないと思います。
もともと胃腸が弱い人、冷たいものや油っぽいものを食べると消化不良を起こし下痢などを起こしやすい方には、あまりおすすめしない食べ合わせではありますが。
夏の暑い日に食べる冷たい天ざる! デザートに冷えたスイカ!! 美味しいですよね。胃腸が強い私は、この組み合わせ、あまり意識することなく食べているかも……。
──そういわれると私もなんだかお腹が空いてきました……!
蟹と柿
──先の2つに比べるとマイナーな気はしますが……。古くは中国(明の時代)の薬学書『本草綱目』に記載がある食べ合わせのタブーだそうです。先生、こちらはいかがでしょう?
蟹も柿も、漢方・薬膳の考え方において体を冷やす性質をもつとされる「寒性」の食物です。
蟹も柿も旬は秋から冬。寒くなる季節なので、その時期に体を冷やす食材同士を組み合わせて食べるのは、あまりお勧めできません。冷え性の方は特に注意してくださいね。
──こちらもそれなりにタブーとされる根拠がありそうですね。そもそもあまり一緒に食べる機会がなさそうな食材の組み合わせではありますが(笑)。
そうですね。実際、別の見方として、蟹は海の幸、柿は山の幸ということで、流通手段がまだ充実していない時代に、海と山の幸を一緒に食べようとすると食材が傷んでしまい、お腹を壊してしまう危険がありますよ! ということを伝えるために言われはじめた──なんて説もあります。
柿は、「柿が赤くなれば医者が青くなる」といわれるほど、健康に良い食材として知られていますが、冷え性、産後や病後の人は特に食べ過ぎないように注意しましょう。
柿にはビタミンCが豊富に含まれていますので、ビタミンCの抗酸化力をサポートするビタミンEを含む食材との組み合わせがおすすめ。
柿はそのままデザート等で食べる方が多いと思いますが、豆腐、ビタミンE豊富な胡麻と組み合わせ、白和えにしていただくのも美味ですよ。ぜひ試してみてくださいね。
──さすが先生、美味しそうなレシピのアイディアまで! さっそく試してみます!
棚橋先生、ありがとうございました!
リケラボでは今後も料理や食材の素朴な疑問の答えを探求してまいります!
管理栄養士/フードスタイリスト 棚橋 伸子先生
国際薬膳師、中医薬膳専門栄養士、日本野菜ソムリエ協会 野菜ソムリエ、日本ニュートリション協会公認 ビジネスサプリメントアドバイザー。
管理栄養士養成施設非常勤講師。 栄養バランスを考慮したヘルシー料理を得意とし、企業の商品開発業務等にも携わる。中医学理論に基づいた薬膳料理の提案も得意とする。
facebookページ:管理栄養士棚橋伸子のすまいるきっちん
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