経済産業省「理系女性活躍促進支援事業」の取り組みのひとつとしてスタートしたばかりの「リケジョナビ」。企業への就職を考える学生が、さまざまな業界・企業において理工系人材に求められるそれぞれの専門スキルを知り、現在の自分のスキルと比較しながら将来の就職先を検討するのに役立てることができる、画期的なシステムが誕生しました。
現状では「日本の製造業を中心とする多くの企業は、電気・機械系を中心とする工学部出身の人材を採用する意欲が高いものの、その母集団は男子学生が86.4%、女子学生が13.6%と、女子の数が圧倒的に少ないのが現状です」と、この支援事業を推し進める経済産業省の飯村さんは言います。
さらに「女子は、男子と比較してバイオ系など、産業界の採用ニーズが相対的に少ない分野を学部で選択する傾向が強く、そこにズレが生じやすいようです。そのアンマッチを可視化することが必要だと考えました。学生自身が、自分にどんなスキルが足りないのか、どんなスキルを付け加えれば希望の仕事に近づけるのかを知る、そんなツールとして活用してほしいです」と、このシステムが生まれた背景を語ってくれました。
実際に大学で履修した科目や学んだ専門知識が、就職後の企業で存分に活かされていないケースは多々あり、「女性に限ったことではないのですが、日本の企業は大変な時間とコストをかけて企業内での再教育をしているというのが実情です。そういう意味でも、大学生、大学院生が必要な基礎知識をしっかり身につけて卒業、修了することが産業界から望まれています」(飯村)とも。
そんな背景から、リケジョの就職活動に役立つツールとしてカットオーバーされた「リケジョナビ」ですが、就活直前ではなく、実際には大学に入ってすぐにでも活用してみてほしいと、開発担当の野口さんは言います。
「将来的に就職先として希望する業界や企業にマッチしたスキルを身につけるために、大学でどんな科目を履修して基礎を学んでおくべきなのか、あるいは、どんな分野の専門知識が求められるのかということを、早い段階で知っておくほうが良いと思います。自分に足りない知識はこれだとわかったとしても、就職活動が始まってからでは、そのリカバーは難しいですから」(野口)。
使い方によっては、大学の学部や学科を選ぶ際のヒントとしても活用できるようになるかもしれません。『Rikejo』読者の皆さんも今後、要注目のサービスです。
「現在のシステムでは、就活で実際に企業へエントリーを出して面接へと進む前段階で、希望する企業が求めるスキルと、今の自分のスキルがどれくらいマッチしているかを見ることを第一の目的としています。自分に合うのはAという業界だと思っていたけれどBもCも意外に合うとか、具体的な可能性の幅を知ることで、面接で自分の研究実績なども効率良くアピールすることができると思います」(飯村)。
実際に、ダイレクトにリクルーティングにつながるサービスは「まだ今後の検討課題」(飯村)とのことですが、「実際に学生にモニター的に使ってみてもらった際には、『自分がどんな業界に向いているか、占いみたいに楽しめた』という言葉をいただいたのが印象的でした。ある種の『相性診断』を受けるみたいに、気軽に何度でも使っていただければと思います」(野口)と語ってくれたように、定期的に自分の立ち位置を知るためのプラットフォームとしても便利なサービスだと思います。
立ち上がったばかりの「リケジョナビ」は、将来の仕事を考えるすべてのリケジョと、前向きに社会で活躍しようと考える人材を求める企業とが、より効率良く出会えるように、今後もどんどんサービスや機能をブラッシュアップしていく予定です。次号では、実際に学生にこのシステムを使ってもらって、その使い方や結果の読み取り方などをレポートしたいと思いますので、ぜひお楽しみに。
最後に、社会の第一線で活躍する頼もしい先輩リケジョである飯村さんと野口さんから、未来の女性活躍社会を担う『Rikejo』読者に熱いエールをいただきました。「物事に対して『なぜ?』が次々と浮かぶあなたは間違いなくリケジョです。その好奇心が、世の中を、未来を変えていく力になります。ぜひ理系の世界で活躍してください」(野口)。「自分のキャリアは自分でデザインする意思を持つことが大切です。理系の仕事は時代が移れば求められるものも変化しますが、今後さらにリケジョの力が求められていくはずです。自信を持ってチャレンジしてください」(飯村)
https://tc-navi.jp/rkj/
大学での履修科目や成績から、現在の自分のスキルがわかります。
志望分野にどんなスキルが必要かを見定めるためにも、今後ぜひ活用してみてください。
協力/一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会(JRIA)
*Rikejoマガジンvol.45(2017年5月刊行)にて掲載