Q:現在の仕事について教えて下さい。
私は香料開発研究所に所属し、国内向けのヘアケア製品の香りをつくるのが仕事です。実際に香料を調合して香りにつくるのはパフューマー(調香師)ですが、具体的に香りの方向性を決めていくのが、私たちエバリュエーターです。
例えば、『メリット』は家族がターゲットで、コンセプトは「家族で使える優しい香り」です。清潔感や優しさがキーワードで、マイルドな香りです。『セグレタ』は40~60代の女性がターゲットになりますので、「大人女性の笑顔を引き出せる香り」というのをテーマでつくっています。華やかさやチャーミングがキーワードになります。
それぞれの商品のコンセプトに対する香りのイメージやターゲットの嗜好、世の中全体の香りのトレンドなど、いろんなことを踏まえて、「こういう香りをつくろう」という香りのイメージを決めることがエバリュエーターの仕事です。
Q:香りづくりの仕事で大事なことは何ですか?
香りづくりはセンスが問われる、匠の仕事だと思います。
香りの素材となる香料は数千種類以上あり、それをパフューマーが調合して新しい香りをつくっていきます。数千種類の香料すべてを覚えるのは難しいですが、覚えていないと評価できませんので、がんばって覚えました(笑)。
入社したてのころは早めに出社して、同期と一緒に「今日は10個香りを覚えよう」というトレーニングを2年ぐらいずっとやっていました。おかげで現在は200~300種類の香りはわかると思います。
香りが好きな人は覚えやすいですし、仕事にも前向きに取り組めると思います。ただ、微妙な違いを嗅ぎ分けないといけませんので、評価しているときはなるべく強い匂いがするものや、スパイシーなものは食べないようにしています。また風邪をひいて薬を飲んでしまうと、匂いのイメージが変わってしまうので、常にコンディションを整えておかないといけません。
Q:学生時代の研究が、現在の仕事に活かされていることはありますか?
大学では、多糖を扱う研究室に所属し、多糖類の中のある一種類をマウスに食べさせたときに免疫の活性が上がるかという研究をしていました。大学院では同じ研究室だったのですが、テーマが変わって、幹細胞の代謝について研究していました。現在の香りの仕事に直接かかわる研究をしていたわけではありません。
香料は有機化合物ですが、私が進学した農学部といえども有機化合物の知識は必要でしたので、大学で学んだ化学の知識は活きています。例えば香料の強さであったり、揮発しやすかったりとか、化合物の物性を理解するのに役立っています。
あとは仮説と検証を繰り返しながら、論理的に考えて研究をすすめていく姿勢です。それは理系だからこそ、身についたと思いますね。
Q:高校時代はどのような生活をしていましたか?
中学時代はバレーボール部に入っていたのですが、高校ではもうハードな部活はやりたくなかったので(笑)、高校では『クッキング同好会』に入りました。毎週土曜日に集まって、お昼ごはんとデザートをつくっていました。もちろんつくったものは自分たちで食べますが、余ったものは土曜日に部活している野球部やサッカー部、バスケ部の人たちに配っていました。みんな、すごく喜んでくれましたね。
受験勉強を本格的に始めたのは高3の4月からです。それまでは塾に通いながら、普段は地元の図書館や塾の自習室などで勉強をしていました。家は寝ちゃうし、テレビを見られますし、おやつも食べられます。私は誘惑に負けてしまうタイプなので(笑)、あえて自宅以外で勉強していました。あと化学や生物に関してはいろんな問題集に手を出さずに、学校が指定した一冊の問題集を自分で解けるまで何度も繰り返していました。
(取材・文=川原田剛 写真=井上孝明)