講談社 大会議室にて
9月19日(月・祝)、講談社本社にて、Rikejo ワーク&ライフフェアが開催されました。
今回のワーク&ライフ フェアは、理系を応援するリケジョプロジェクトと、自分らしいワーク&ライフの実現をミッションとして活動しているスリール㈱と、場づくり、コミュニティづくりを活動の軸としている㈱エンパブリックとで、共同開催で、軸を持ってしなやかに生きる理系女性の生き方を学び、人と繋がり、自分らしいワーク&ライフを実現するを目的として開催されました。フェアの終わりには、「明日からの小さな第一歩」を皆さんにお持ち帰りいただけうよう事務局としても、心がけました。
プログラムは、
1.自己紹介タイム「私の24時間をセルフチェック!」
2.ゲストトーク 「4人の先輩に『私らしいワーク&ライフ』を聞いてみよう!」
3.グループトーク 「自分らしい『ワーク&ライフ』を実現するには?」
4.交流会
の4つです。
真剣に自分の24時間を記入する皆さん
まずは、ワーク&ライフを語る前に、自分のワーク&ライフはどうなっているかを気づき、何を本フェアで学ぶかを明確にするため、ワークシートを使って、ご自分の24時間を振り返ってもらいました。そして、それをグループで発表し合いました。
今まで、あまり、自分の24時間を振り返ることがなかった方も多かったようで、改めて自分の時間の使い方がわかった、やっぱり自分の時間がないなど、みなさん思うところは多かったようです
・㈱リコー テクノロジーセンター シニアスペシャリスト 並木章代さん
・薬剤師 松澤 裕子さん
・東京工業大学大学院 生命理工学研究科 講師 松田知子さん
・理系漫画家 はやのん さん
㈱リコー 並木さんによる発表
㈱リコーの並木さんからは、ご自身のライフヒストリーや、子育てをしながらメーカーで働くということ、管理職として働くこと、日々の生活の中で気をつけていることなどをお話いただきました。時には、朝3時におきて、早くに出勤し、育児と仕事の両方がうまくこなせるようにされている生活や、常に「自分のやりたいことをやる」というモットーなどをお話いただきました。特に、お仕事も、メリハリをつけて、会社でやる必要のあるもの、自宅でできるものなど分けるというやり方や、自分自身の時間も大切にされているというお話、人を頼ることも必要だが、その場合にも感謝と気遣いを忘れてはいけないといったお話は、皆さんの心に響いたようでした。
松田さんによる発表
㈱リコーは、産休からの復職率はほぼ100%であり、また、子育て中の人にはフレックス制が許可されているなど、女性が働くということに対して環境がかなり整備された企業であります。しかし、一方で、そのような制度や環境が整っていない企業もあります。続いて、お話いただいた薬剤師の松澤さんは、それまでなかった制度や環境を整え、自ら育児休暇をとり、復職をして、薬剤師として活躍している生活についてお話いただきました。
松澤さんがすばらしいのは、もちろん育児休暇のための制度を整えたといった点もそうですが、薬剤師として働き始めて早い時点で、薬剤師という資格に甘んじることなく、「薬剤師を一生続けるためには、単に資格があるだけではだめで、色んなことができる薬剤師にならなければならない」と感じ、そのための行動をおこした点ではないでしょうか。その延長線として、育児休暇の制度を整えたということがあります。また、そういった姿勢が認められ、会社としても協力的に松澤さんの復職を支援したということがあります。自らが会社から求められる存在であり続けて、かつ行動をおこして、今の松澤さんがあるのです。また、一方的に権利を主張するだけでなく、回りの人に迷惑をかけないように、自分ができることは自分がなるべく引き受けるといった姿勢で働いてらっしゃることも、周りの協力へとつながっているのではないでしょうか。
東京工業大学 松田先生による発表
次にお話しいただいたのは、東京工業大学で講師をされている松田先生です。松田先生は、二酸化炭素を材料として酵素を利用する有機合成反応の研究をされています。松田先生からは、大学で研究を行なうことのメリット・デメリットや、子育てをしながら研究をすることについてのお話を頂きました。
松田先生は、高校・大学とアメリカで過ごされたこともあり、女性が働くというは当然であるという意識が潜在的に身に付いたとされています。そういった意味で、色んなライフステージの中で、研究を止めるという選択肢なまったくなかったそうです。そして、途中、流産など悲しい経験もされたそうですが、今は、お二人の子どもに恵まれ、子育てと研究に充実した生活をされているそうです。お子様が生まれてからは、研究に対する考えや(研究費を取るための研究ではなく、真に人類に役立つ研究であるかといった基準を考えるようになった)、姿勢(時間をかける研究でなく、アイデアで勝負するものを行なう、他人が競争をし合っているような分野でなく創造性を活かして誰もやっていないことをターゲットとする)が変わり、逆に賞を受賞するなど、飛躍的に研究者としてのキャリアも向上されたそうです。ノーベル賞をとるような研究というのも、どちらかというとこういう発想力・創造力によることが多いそうで、研究として時間をかえることだけがいいことではないというのは、確信されているようです。
子育てについては、家族の支援がえられる環境にないので、保育園やベビーシッターさんなどを活用して、サポートを得るようにされているそうです。さらに、研究と子育てだけでなく、週に1時間でもいいから、自分の時間を確保することが、体や精神によい影響を与え、結局は研究や子育てにもよい結果とつながるとのことでした。最も大事なのは、自分の健康とされていたのはすごく印象的でした。働く女性は、何でも自分を後回しにしがちで、結局はそれが、全体として悪い方向に行ってしまうことはあるのではないでしょうか。少し遠回りのようで、それが実は最適な方法であるという発想の転換が必要であると思われます。
はやのんさんによる発表
最後に、発表していただいのは、理系漫画家のはやのんさんです。はやのんさんは、物理学科出身の漫画家として、理系の強みを活かしつつ、科学の魅力を漫画を通じて私たちに伝えるというお仕事をされています。Rikejo冊子の『Rikejoの オシャレ研究所』も執筆中されているので、ご存知の方も多いはず。その他、「子供の科学」「日刊工業新聞」などで漫画を連載されており、様々な分野でご活躍です。応用物理学会の75周年イベントで司会をされた時に、ある先生から「理系の漫画家だから、理系漫画家」といわれたことがきっかけで、理系漫画家としてのお立場を確立されていったそうです。組織に属するのではなく、独立してまた、在宅で仕事をするというワークスタイルは、前述のお三方とは異なる点ではありますが、時間の使い方の考え方などについては同じように効率的に、段取りよくといった考えでお仕事されているのは同じです。早朝(時には二時)に起きて、アシスタント(全国にネットでつながったアシスタントさんがいらっしゃいます)へ支持することから、1日は始まります。お仕事の合間を縫って、アシスタントさんを教育されたり、育児・家事をこなし、次の仕事のための勉強をされと、まさにフルパワーです。
在宅で仕事をするといくらでもできそうな錯覚に陥ってしまいがちなのですが、時には子供を負ぶって立ちながら締め切りまでに間に合うように書くとか、ご苦労は絶えないようようです。また、アシスタントさんも出産されたばかりなので、お二人で3人の子どもを抱えながら、お仕事をするといったことをされているようです。
ワークスタイルとしては、出産を機に、子育てには何があるかわからないということから、締め切りギリギリに出していた原稿を、1日前には出すように心がけるようになったとのことでしたが、やはり、プロとして周りに迷惑をかけないようにする配慮をされています。こうした日々の努力の積み重ねにより、理系漫画家という地位を確立されていったんだということが伺えました。
堀江さんの進行によるパネルトーク
皆さんに発表いただいた後は、スリール㈱代表の堀江さんのファシリターによる、パネルディスカッションです。そこでは、一つの質問として、「パワーの原動力」は何かという点について、お伺いしたのですが、皆さんのお話を聞いていて、とにかく「好きなことをやりたい」「仕事を続けたい」という素直なお気持ちなんだということが分かりました。育児を続けながら働くということは別に特別なことではなく、皆さんの中でごく自然なことであり、そういうお気持ちがが「しなやかに生きる」ことにつながっているのだと思います。
そして、最後に参加者から、質疑応答として、「日々忙しくて本当に嫌になっちゃったことはなかったですか。また、その時に対処方は?」といった質問が出ました。その場合には、とにかく、ヘルプ信号をだして、割り切って他人や家族に頼る、強引に自分の時間をとってリフレッシュする、また、そうなる前の予防として日々の生活の中で少しでもいいから自分の時間をとるといったアドバイスをいただきました。その他、文系と理系との違いといった点にも触れられましたが、文系の方は、仕事の場面で比較的「人脈」が必要な場合があるのだが、理系は自分だけで勝負ができる場面が多いので割と自分の裁量で仕事ができること、また、評価のされ方が明確である点も、仕事を続けやすいのではないかとの意見を頂きました。
このセッションを通じて、ゲストの皆さんに共通していることが、出産・育児というともすればキャリアに対してマイナスイメージになるものが、ワークスタイルの見直しをするチャンス、効率的に働くためのチャンス、仕事に対する考えを変化させそれがいい方向への向かうチャンスと、プラスに働いていることが印象的でした。
また、「両立」とは何かと考えた時に、何も100%対100%をすることではないということが、よくわかりました。それぞれの、環境や体力やモットー、時期に応じ自分なりの両立ということを考えばよいことが伺えます。さらに、他人に対して、発信し、お願いする、頼るという割り切りも必要だと強調されており、しかし、その一方で、今の自分があるのは、周りのおかげという感謝の気持ちとそれに対して貢献していくという気持ちが大切であることもおっしゃってました。
こうしたお話は、参加者みなさんに、発想の転換を促し、安心を与えるものであったと思われます。参加者アンケートの中でも、「パワーが出てきた」というご意見の反面、「肩の荷が下りた」、「なんとかなるかもと思えた」といったご意見も見受けられました。みなさんに大きな気づきを与えたセッションであったと思われます。
グループでのディスカッション
休憩を挟み、次はグループセッションです。9グループに別れ、リケジョもブケジョ(文系女子)もブケダン(文系男子)、リケダン(理系男子)も混じってのディスカッションタイムです。ゲストの方にもお入りいただき、それぞれ、自分らしいワーク&ライフを実現するためにということで、まずは、一人一人ワークを行い、それを発表しあった後、グループで一つ課題を一つ選んでいただき、そのための解決策などをディスカッションいただきました。
なかなか課題を一つに絞るとことに、各グループご苦労されたようですが、テーマ設定後はトークがはずみ、最終的にはどのグループも立派に、結論をだしていただき、ご発表いただくことができました。最後に発表しあうことで、また、それぞれの思いが共有でき、これもまた、大きな気づきになったと思われます。
グループワークで、皆さんにお書きいただいたシートの一つです。それぞれのグループで、課題が異なりました。
お菓子を食べながら
最後は、交流会です。まったくのフリーで、お好きな方とお話いただくというスタイルでした。お子様も混じり、また、お菓子を食べながら、和やかにお話がはずみました。プログラム上、時間が少なく、物足りなかったというご指摘もあり、また、お酒が入らなくちゃ!という意見もありました。今後の参考にさせていただきたいと思います。
3.5時間という長時間にわたるイベントでしたが、私自身、あっという間でした。色んな新たな出会いがあり、このご縁を感謝しつつ、また、このつながりを何かの形にできればと思います。
ゲストの皆様、参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
(文責 事務局 矢部)
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