3Dプリンターで脚光を浴びる印刷技術。
今や、印刷は「刷る」に留まらず、ものづくりを支える技術となっています。
さて、前回のレポート「次世代太陽電池はカラフルでおしゃれ!?」では、東京大学の内田聡先生が研究する「色素増感太陽電池」をご紹介しました。
続編である今回は、色素増感太陽電池の作製法を大公開します!
ここでも鍵を握るのは印刷技術。コストダウンとデザイン性の両方を叶える印刷機で、どのように太陽電池パネルが作られているのでしょうか。
・・・と、その前に!そもそも、どんな仕組みで発電しているのでしょう。色素増感太陽電池は、主に3つのパーツで構成されています。
② 対極(導電性の基板)
③ 電解液
①の電極上で色素が光を吸収すると、光エネルギーが電子と正孔(電子が不足して相対的に正になった状態、ホール)の電気エネルギーに変換され、これを使って発電するというメカニズムです(詳しくはこちらhttp://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html)。
色素増感太陽電池は、材料が安価で、現在主流のシリコン系太陽電池よりも大がかりな製造工程を必要としないため、低コストでの実用化が期待されています。とはいえ、日頃の研究は小さなサイズから。開発が進むにつれ5mm四方の電極, 3cm四方・・・と徐々にスケールアップして、光のエネルギーが何パーセント、電気になったかという変換効率のテストを繰り返します。そして、ついに巨大印刷機&真空張り合わせ機が登場!
ガラス基板をセットすると、自動で印刷機へ。白いペースト状の酸化チタンを塗布し、印刷。
その後、120℃で3分間乾燥。これを3回繰り返した後、銀の配線を印刷。
500℃で酸化チタンを焼き付ける
上記のガラス基板を浸す
シール剤と電解液を滴下(滴下量もマイクロレベルの微調整!)
チャンバーの中で、真空で貼り合わせて完成!
実用化を見据えた作製技術。しかし、ここまでの道のりは決して一筋縄ではなかったようです。
「最初は、みようみまねでした。ハロゲンランプの光源に徐々に試作機を近づけていき、プロペラが回る瞬間を待ちました・・・かなり強い光でもプロペラは回らず、諦めかけたときに、ついに動いたんです!でも、あまりにも光源に近づけすぎたので、熱でガラスが割れて、プロペラが回ったと同時に煙があがってしまいました(笑)」と話す内田先生。
初めてプロペラが回ったときの感動が忘れられず、そこから先生の色素増感太陽電池の研究人生がスタート。「材料さえあれば、自分の手でつくり出せることが最大の魅力。この感動をみなさんとも共有できたら嬉しい」と、最後にリケジョの皆さんへの熱いメッセージをいただきました。(堀川 晃菜)
● 研究者 プロフィール
東京大学 教養学部附属教養教育高度化機構 環境エネルギー科学特別部門 特任教授
▶ 内田先生のwebページはこちら http://kuroppe.tagen.tohoku.ac.jp/~dsc/cell.html
● ライター プロフィール
知りたい・伝えたい、が原動力の「つたえるリケジョ」
同じことでも伝える人や伝え方によって、生み出されるものが違うからこそ、
究極のコミュニケーションって何だろう、と思います。企画力、表現力を磨きたい。
かつての専攻はバイオテクノロジー、研究パートナーは大腸菌。
農薬&種苗メーカー、科学館勤務を経て、ライター・編集者に。