電子部品
 
いす、机、コーヒー、本、猫、鳥…。
皆さんの周りには、何があるでしょうか。
今、目に見えるものすべては、
たった3種類の小さな粒々が集まってできています。
もちろん、あなた自身も。
 
 
ラジカセを破壊
小学校低学年のときに、近所の空き地に“秘密基地”を作りました。空き地に置かれていた工事現場の廃材を組み合わせたものです。入口から部屋につながるトンネルに、“作戦会議”を開く広い空間。子どものころの曖昧な記憶ですが、なかなか立派なものでした。
 
ある日、捨てられていたラジカセが、秘密基地に運び込まれました。何カ月も風雨にさらされてボロボロになった機械を眺め、一つの疑問が浮かびました。「ラジカセの中身はどうなっているのだろう」。子どもの発想は大胆かつ残酷です。ラジカセをコンクリートのブロック塀に思いっきりぶつけて、破壊しました。すると、何かの果物の種のようなカラフルな電子部品が緻密に並んだ電子基盤が、飛び出してきました。
 
 
物質はすべて元素でできている?
「ものが何でできているのか」という問いは、ずっと昔からある疑問です。「水兵リーベ、僕の船」(H, He, Li, Be, B, C, N, O, F, Ne)。すべての物質は、周期表にある100種類以上の元素でできていると、高校で習います。さらに、元素はすべて「陽子」と「中性子」でつくる「原子核」と、その周りにある「電子」でできていると。
 
周期表2
仮説社・「世界一美しい周期表」より引用(http://kasetusha.cart.fc2.com/ca36/170/p-r36-s
 
元素
 
 
破壊して探す
高校で習うのはここまでです。しかし、実は陽子と中性子は一番小さな粒々ではないんです。陽子と中性子が何でできているかは、どうやって調べられるでしょうか。子どもの大胆な発想もあなどれません。思いっきりぶつけて壊せばいいんです。
 
syoutotu
 
小さな粒を加速させて衝突させ、何が飛び出てくるかを観測する実験施設を「加速器」と呼んでいます。子どもの遊びではないので、ものすごい速さまで加速します。ほぼ光の速さ。例えると、1秒間に地球を7周半する速さで、粒と粒を正面衝突させるんです!
 
quark
 
そして、陽子は「アップクォーク」という小さな粒々2個と、「ダウンクォーク」という小さな粒々1個でできていることが分かりました。さらに、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個でできていることが分かりました。なので、今目に見えているものすべては、アップクォークとダウンクォーク、電子という、3つの粒々でできているんです!この加速器での実験。小さな粒の世界を追い求めていたら、実はとても大きな世界とつながっていました。この世で一番大きなもの。宇宙とつながっていたんです。それはまた、別の機会に。(福田大展)