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12月も下旬に入り、正月が近づいてきました。正月といえば「おせち料理」。家族みんなでおせちを囲むだんらんとした時間は何ものにも代え難いひと時ですよね。

ですが、そんなおせち料理を作るときに「めんどうくさい」や「上手く作れない」といった嫌な思いを抱える方も多いのではないでしょうか。科学の視点からその解決策を探るべく、管理栄養士/フードスタイリストの棚橋伸子先生にお話をうかがいました!

「おせちは保存食」というのは本当?

「おせち料理はもともとお正月に料理の支度をしないでゆっくりと休めるように生まれた保存食」という説をちまたで耳にします。たしかに、おせち料理には塩蔵、糖蔵などの食品保存法を活用したものが多く、「おせちは保存食」といえるでしょう。

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たとえば以下の食品が挙げられます。

・数の子など 塩蔵(塩漬けにより保存性を高める)

・黒豆、栗きんとんなど 糖蔵(砂糖濃度を高めることにより保存性を高める)

・なます、酢蓮根(花蓮根)など 酢漬け(お酢の抗菌作用、防腐作用により保存性を高める

塩蔵、糖蔵は、脱水・浸透圧作用により食品の水分活性を下げることで菌が繁殖しにくい環境を作り、食品の保存性を高めます。

酢漬けの場合、酢に含まれる酸に高い殺菌効果があり、腐敗菌の繁殖を防いでくれるため、こちらも食品の保存性が高まります。

余談ですが、酢の強い酸は金属を溶かすので、なますや酢蓮根の保存容器はホーロー製やガラスの容器がおすすめです。

黒豆をふっくら炊くカギは「時間」と「水分量」

おせち料理の定番のひとつで見た目にも美しい黒豆。ですが、ふっくらと美味しく炊くのが難しくて苦戦する人も多いのではないでしょうか。ふっくらと艶やかな黒豆に仕上げるために焦りは禁物です!

ふっくらと煮上げるためには、弱火でじっくり加熱していくことが大切です。豆を戻し煮る寝かす作業で2~3日じっくり時間をかけて仕上げることで、ふっくらした食感に仕上げることができます。

黒豆を煮る時に気をつけるべきもう一つのポイントは、豆が煮汁から出て空気に触れないように煮汁の水分を調整すること。

黒豆のシワは、煮ている間に豆が煮汁から出て空気に触れることで出来てしまいます。豆がしっかり煮汁に浸かった状態を維持しながら煮るように、煮汁の水分量には気をつけましょう。

また、「黒豆に釘を入れて煮上げるときれいな黒色になる」という噂を聞いたことはありますか? じつは、この噂は本当なのです。

黒豆には、ポリフェノールの一種、アントシアニンが含まれています。アントシアニンは、酸性で紅色、アルカリで紫色から青色に変化し、加熱によって退色してしまいます。そして、アントシアニンは、鉄やアルミニウムと結合して安定な錯塩を作りますので、釘の鉄分を利用することによって、長時間加熱しても退色することなく美しく仕上がるのです。

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釘がない場合は、鉄製のお鍋を使用しても大丈夫です。ちょっと手間のかかる「黒豆」ですが、是非チャレンジしてみてくださいね!

蓮根の変色防止に「お酢」を推す!

穴があいていて「見通しがきく」ことから、縁起物としておせち料理の食材に使用される蓮根。切った断面をそのまま放置しておくと褐変してしまいます。みなさんも蓮根の煮物をつくるとき、変色してしまってあまりおいしそうに仕上がらないことはありませんか?

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蓮根にはポリフェノール類が含まれており、それらを酸化する酵素、ポリフェノールオキシダーゼも存在します。そのため、切ったり傷をつけると両者が反応してキノン体ができ、褐変が起こってしまうのです。ですが、蓮根を茹でるさいにお酢を入れることで、褐変を防ぐことができます。

褐変を防ぐためには、加熱して酵素を失活させたり、水に浸けて空気中の酸素との接触を防いだり、酸や食塩により酵素活性を抑制する等の方法があります。

お酢を入れて茹でることで、加熱と酸の効果によって酵素の活性を抑制することができます。さらに蓮根に含まれるフラボノイド色素は、酢処理することにより白色になるという特性もあるため、この点でもお酢は効果を発揮します。

お酢を入れて茹でることは、食感の面でもメリットがあります。酢を加えて短時間煮ると、レンコンに含まれるムチン質が変化し、シャキッと歯切れの良い仕上がりになるんです。

蓮根は切ったら水又は酢水に漬け、茹でる時には酢水で茹でる! ポイントを知ることで、美味しく、見た目も美しい仕上がりになりますよ!

栗きんとんはなぜ黄色?

栗きんとんの鮮やかな黄色。美しいですよね! 栗の実ってもともとはあんなに黄色くないと思うのですが、どうやって黄色くするのかご存知でしょうか。

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栗きんとんの黄色の正体は「クチナシの実」です。

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クチナシの実は、美しい黄色を呈することから、昔から食品の着色に用いられています。身近な食べ物では、「沢庵漬け」に使われています。その他、食品の原材料表示を見た時に、麺類や菓子類で「クチナシ色素」と記載されているのをよく見かけます。

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クチナシの実は、硬い殻に包まれているので、殻を割り、中の実を使用します。栗きんとんに使用する時は、この実を砕いて、お茶パックやガーゼにつつみ、さつまいもを茹でる時に一緒に入れて色付けしましょう。栗きんとんに使用するみりんに、この実を漬けて色付けしておくという方法もあります。

一度色がつくと取れにくいので、殻を割ったり実を砕いたりする時には、まな板の上にクッキングシートのようなものを敷いて作業することをおすすめします。手が濡れていると、手にも色がつきやすいので注意して扱ってくださいね。

そして、着色した後の色を綺麗に保つためには、「みょうばん」が使われます。

さつまいもを0.5%のみょうばん水で下茹でしてから水を捨て、水を加えたところにクチナシの実を入れ、さつまいもをやわらかくなるまで茹でましょう。みょうばん水で下茹ですることにより、色の安定だけではなく、煮崩れ防止にもなります。

栗きんとんが10分で作れちゃうお手軽レシピ

手間がかかるイメージのおせち料理。少しでも手早く作りたいと思いませんか? 特別に、電子レンジを活用して栗きんとんを簡単・お手軽に作るレシピを公開します!

【材料と分量】(4~5人分)

・さつまいも(正味) 200g

・栗の甘露煮 5粒

・栗の甘露煮のシロップ 大さじ3(A)

・砂糖 50g(A)

・みりん 大さじ1 ※クチナシの実を漬けて色付けした「くちなしみりん」(下に作り方あり!)を使用するときれいな色に仕上がります。

・くちなしの実 1粒

・お茶パック 1枚

【作り方】

(1)さつまいもの皮は厚めにむく ※皮を厚めにむかないと、きれいな色に仕上がりません!!

(2)耐熱容器にさつまいもを入れ、ひたひたの水を加え電子レンジ600wで3分程度加熱する。

(3)やわらかくなったら水を捨て材料(A)を加え1分加熱する。

(4)熱いうちにマッシャ―でつぶす。

(5)栗の甘露煮を混ぜ合わせる。

【くちなしみりんの作り方】

クチナシの実は、外側の固い殻をとりのぞき、実を砕き、お茶パック等に入れみりんに一日漬けておく。さといもを茹でる場合には、くちなしの実を一緒に茹で、さといもを色よく茹で上げるが、今回は電子レンジ調理のため、事前に後で加えるみりんに色付けしておくことで、色よく仕上げることができます。

本来なら、丁寧にさつまいもを裏ごして作ることで、滑らかな舌触りが生まれる栗きんとん。今回は時短のためマッシャ―でつぶしますので、さつまいもの食感が所々に残りますが、それでも手作りするとやっぱり優しい味で美味しいですよ!

管理栄養士/フードスタイリスト 棚橋 伸子先生
国際薬膳師、中医薬膳専門栄養士、日本野菜ソムリエ協会 野菜ソムリエ、日本ニュートリション協会公認 ビジネスサプリメントアドバイザー 。
管理栄養士養成施設非常勤講師。 栄養バランスを考慮したヘルシー料理を得意とし、企業の商品開発業務等にも携わる。中医学理論に基づいた薬膳料理の提案も得意とする。
facebookページ:管理栄養士棚橋伸子のすまいるきっちん

(本記事は「リケラボ」掲載分を編集し転載したものです。オリジナル記事はこちら

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