9/30に、日本ロレアル株式会社ご協力によるサイエンス講座「コスメトロジー ~ 化学反応でヘアスタイルをチェンジ!」が開催されました。
講師は、日本ロレアル株式会社 リサーチ&イノベーションセンター ヘア開発研究所応用研究室研究員 千葉史子さんです。リケジョに人気企業の講座ということで、大盛況の会となりました!
1.先輩リケジョによるサイエンスレクチャー「コスメトロジー ~ 化学反応でヘアスタイルをチェンジ!」
まずは、ロレアルについての説明です。ロレアルは、130カ国・地域でビジネスを行い、売り上げ3.2兆円、7万人が働く世界最大の化粧品会社です。シャンプーのイメージが皆さん強いようですが、メイベリン ニューヨーク、ランコムなど多くのブランドを展開しています。また、日本をはじめグローバル規模で積極的な女性科学者の支援や、日本ではリケジョの日を制定して理系の楽しさを伝える次世代の啓発活動もされています。
本社はフランスにありますが、世界に5つの研究拠点があり、日本では川崎にリサーチ&イノベーションセンターがあります。ロレアルの中で、日本は戦略的に重要な国として位置づけられており、それは、日本が世界第3位の市場であること、日本には優れた研究開発能力があると期待されていること、さらに、感度の高い消費者がいるため、日本の消費者に受け入れられた高機能の製品は世界の市場でも通用する可能性が高いからだそうです。
また、日本の研究所の研究員は、女性が60%以上を占めており、ダイバーシティが推進されているロレアルこその高い比率となっています。ロレアルの研究開発には基礎研究、応用研究、開発・評価といったステージがあります。千葉さんは、応用研究に所属しており、新規技術や新規原料を化粧品処方として作り上げ、グローバルな市場を対象とした製品開発を目指しているそうです。
そして、ここからはお待ちかねのサイエンスレクチャーです。千葉さんは、パーマの研究をされているので、髪の毛やパーマの仕組みについて、科学的にお話いただきました。実は、髪の毛というのは、まだまだ解明されていないことが多い分野で、想像以上に複雑な世界のようです。が、今日はなるべくシンプルに髪の毛についてお話します、と冒頭での説明がありました。最初に毛髪とはどんな構造になっているのか(実は海苔巻きみたいになってるそうです!)や、毛髪はタンパク質の集まりといっても過言ではなく、タンパク質を形成するアミノ酸を理解することも非常に大事だというお話をしていただきました。
その後、いよいよパーマの原理のお話です。毛髪の中の特異なアミノ酸(シスチン)のジスルフィド結合(S-S)を酸化還元反応によって化学的に切断-再結合することで、ウェーブを出すという原理についてご説明いただきました。毛髪は死んだ細胞であるため、ある意味「モノ」として捉えることができ、強酸、強アルカリのような過酷な条件の中で化学反応を起こすこともできる。、その性質を生かすことで、私たちにとっての「美」という感性を表に表すための手段の一つがパーマなのです。パーマはヘアカラーと共に、化粧品の中では非常に数少ない化学反応が使える分野です。
実際に、パーマ液を嗅がせてもらいましたが、結構、強烈なにおいです。そして、その化学反応には2段階あることも、説明してもらいました。そういえば、パーマをかけるときに「2番目のお薬つけますー」とかってよく言われますよね。そういう原理だったのかと納得です。ちなみに、コテを使ってウェーブを出すのは、化学反応によってシスチン結合を参加還元するのとは異なり、水素結合という弱い結合を作ることによって出しているのだそうです。つまり、共有結合を形成するわけではないので、シャンプーをすれば水素結合は切れて、ウェーブも取れてしまいます。
パーマの研究開発の難しさは、パーマをかけるお客さんとパーマ剤を実際に使う美容師さん、両方のニーズを満たす必要があること。また一方で、パーマの原理自体も完全に究明されてはいないので、毛髪も含め、アカデミックレベルの研究成果も時に求められることだそうです。しかしながら、このように消費者のニーズにこたえながら、同時にアカデミックレベルの研究にも携わることのできる、とてもやりがいのある分野とのことです。今後も、匂いがないパーマ剤やダメージレス、髪質を選ばないでパーマを均一にかけられるようにするなど、さらなるパーマの進化に向けて、これからも研究開発は続いていくようです。
2.先輩リケジョ×リケジョによるトーク
講座の後は、質疑応答です。リケジョ製作所の大澤さんが司会を勤めます。会場からも、パーマ薬剤の安全性に対する質問や、コテを使った際の髪へのダメージについてなど積極的な質問も!
また、千葉さんの研究員としての生活にも質問が。企業で研究生活は、大学での研究に比べ、研究する時間は圧倒的に減るとのこと。研究4割、デスクワーク3割、会議3割というイメージだそうですが、会議の時間が多いのが企業での研究の特徴だそうです。しかし、会社の中で組織として製品を開発し、世に出すためには、色々な部門と連携していくことが必要で、そのための会議というのはとても重要です。
また、研究アイデアはどうやって出すかについても質問がでました。一見、関係ないようなことがアイデアに結びつくこともあるので、常に、アンテナを張ることが大事だそうです。それを見つけるのが辛く、苦しいこともあるそうですが、それを乗り越えて新しい製品を生み出していくのは、まさに研究開発の醍醐味といえます。
3.交流会
最後は、千葉さん、リサーチ&イノベーションセンターの實川さん、三栖さん、広報の船津さんを囲んでのテーブルトークとなりました。
研究所の採用や、求められる人材、どんなお仕事をしているかなど、熱心に皆さん質問をしていました。採用時に英語の面接があるときいてびっくりの学生さんも。人気の企業だけに、皆さんの熱意があふれておりました。
そして、日本ロレアルさんからの今日のお土産は、ロレアル パリのシャンプー&リンスのセットです。お土産も頂いて、色々なお話もできてと、大満足の授業となりました。
【参加者の感想】
・大学の講義ではきけないような専門的なお話で、自分の生活に欠かせない髪の毛について聞けて、とても楽しかったです。
・化粧品業界で就職したく、ファンデーション等の研究をしたいと考えていましたが、ヘアケアの研究にも興味を持ちました!
・パーマについて細かなメカニズムまで説明いただいて、目からウロコでした。また、社会人としての研究について、学生との違いを学ぶことができました。
・ロレアルで働く研究員の女性比率が高くてすごく働きやすそうと思いました。また、一見関係ないことも仕事につながると聞いて、もっと幅広い視点で就職とか考えたいと思った。
・身近な化学をこのような形で楽しむことができ、よかったです。自分の専門と結構近いことを実感しました。
・会社のお話をたくさんきけて、就活を考えるに当たり、とてもよい機会になりました。想像以上に、今学んでいることの多くが社会に出た時につながるのだなと思いました。
・普段自分が大学で学んでいる知識が、使われていることを、改めて実感することができ、とても勉強になりました。
・毛髪についてのことで、未だにはっきりしない部分が多いという事で、今後の化粧品の進化が期待できましたし、自分も将来関わってみたいと思いました。また、質疑応答でもたくさんの情報が聞け、大変参考になりました。
そうそう、コスメの中には、サイエンスがいっぱい!
そして、化粧品関連商品の中で、「化学反応」の原理を使った製品ができるのは、ヘアケア製品だけって知ってましたか?
本講義では、そんなヘアケア製品、特にパーマの化学的原理や、製品開発の特徴について、
世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人日本ロレアル(株)の研究員の方よりお話いただきます。
また、グローバル企業ならではの研究開発の特徴や、研究所で働く先輩リケジョの1日紹介などもお話いただく予定です。
化粧品などの研究開発に興味のある女子、化学&化粧品 大好き女子には必見の講義。
そして、なんと! 日本ロレアル様のご好意により、当日はすてきな製品のお土産もあります!
化粧品で Let's サイエンスしましょう!
【プログラム】
1)先輩リケジョによるサイエンスレクチャー
「コスメトロジー ~ 化学反応でヘアスタイルをチェンジ!」
2)先輩リケジョ×リケジョによるトーク
3)交流会
※当日は、日本ロレアル(株)よりプレゼントあり!
日本ロレアル株式会社 千葉史子様
所属 :ヘア開発研究所 応用研究室 研究員
入社以来、「ロレアル プロフェッショナル」ブランドのパーマをメインとしたヘアのファイバートランスフォーメーションの新規技術開発に従事。
※すでに終了しました。
定 員:20名 ※申し込み先着順