Q:現在のお仕事の内容を具体的に教えてください。
ゴールドマン・サックスは1869年に創業されたニューヨークを本拠とした金融機関です。弊社には事業の成長を助けるためのアドバイスをする投資銀行部門、株式や債券を売買してお客様の投資のお手伝いをするトレーダーがいます。ここまでが一般的に証券会社の仕事としてイメージするものですが、それ以外にも、お客様の投資の参考になるような情報を提供する投資調査部門、株式や債券の取引を管理するオペレーションズなどがあります。
私はテクノロジー部に所属していて、現在は社内で使われているリスクの計算やレポートを作成するアプリケーションを開発しています。
プログラマーのほとんどが年数を経てそのうち管理職になるように思われがちですが、私はいまでも自分でコードを書いています。弊社は自社でアプリの開発をしていますので、どういう方向で開発を進めるのか、また不具合があった時の対処の仕方など、さまざまな問題解決に取り組んでいます。
ゴールドマン・サックスは金融機関ですが、全世界で約3分の1にあたる社員がエンジニアで、さまざまなチームに分かれて仕事をしています。高度な数学的技術を使って金融マーケットやリスク分析をする「クオンツ」と呼ばれる数学に強い専門家を始め、オペレーションが正確かつ効率的に行えるようなアプリケーションを開発するチーム、不正な取引やアクセスを監視したり、企業の情報が外部に漏れたり、ウイルスに感染しないかを対応するセキュリティ関係のチーム、また日常業務がスムーズに行えるようにネットワークや電話回線などのインフラを管理しているチームもあります。
Q:アメリカの大学を卒業しています、日本との違いはありましたか?
私はプログラミングを勉強したいと思い、日本で短大を卒業した後にアメリカに渡り、カリフォルニア州立大学でコンピューター・サイエンスを専攻しました。
最初に受けたTOEIC(トーイック)のテストでそれなりの点数が取れ、無事に大学にも入学できましたが、いざアメリカで生活してみると、英語がまったく通じませんでした。私は両親が英語を話せたので、自分もできると思っていたのです(笑)。ところが、サンフランシスコ周辺は移民が多く、いろんな国のアクセントがありますし、大学で勉強する生物などの専門用語はまったくわかりませんでした。最初のうちは授業を録音して、何度も聞き直すなど、必死に勉強しました。
日本と異なり、アメリカの大学は入るのは比較的簡単なのですが、単位を取るのが大変です。私はそれを知らなくて日本の学生時代のように遊んでいたら、最初のテストの成績が本当に悪かった。それで「これはまずい」と発奮して、それから一生懸命勉強をして、無事に卒業することができました。
Q:金融関係を目指す中高生の皆さんに、学生時代にやっておいたほうがいいというアドバイスはありますか?
金融に限らず、企業はグローバルな人材を求めています。外国語が話せると交友関係や視野が広がると思います。違うもの、たとえば言葉や文化を理解したり、受け入れたりする力はとても大切で、仕事でも活かすことができます。
日本人同士なら意見があっても、異文化の人だと同意できないこともあります。それを受け入れ、お互いに歩み寄る術があれば、仕事もスムーズにいくはずです。まずは英語と思っているならば、英語のドラマで耳を慣らせてみてもいいでしょう。
Q:理系を目指す女子中高生へのメッセージをお願いします。
アメリカなどでは小学生がプログラミングを学び始め、身の回りのウォシュレットや家電製品でさえIoT(Internet of Things=モノのインターネット)が浸透している時代です。医療関連でもカルテが電子化されたおかげで、膨大なデータ解析が可能となり、難病の研究にも役立っています。最近では「フィンテック(fintech)」という金融(finance)と技術(technology)をかけ合わせた造語を耳にすることもあるかと思います。モバイル決済やクラウドファンディングなどがフィンテックの一例です。
今後は、銀行間の情報交換も活発となり、ベンチャー企業なども参入してくることにより、ビックデータと人工頭脳を駆使したさまざまな技術革新が期待されます。これにコンピューター・サイエンスは深くかかわっているので、学んでおいて損はないと思います。
なお、ゴールドマン・サックスでともに働く堀内美希さん(写真右)のインタビューも掲載しています。こちらをご覧ください!
(取材・文=川原田剛 写真=井上孝明)